米ドルは木曜遅く、米国とイランが停戦を60日延長し、ホルムズ海峡を再開、核協議を開始するための「覚書(MOU)」に関する報道を受けてリスク心理が改善する中、軟化した。ホワイトハウスは報道内容を確認した一方で、ドナルド・トランプ大統領はまだ承認していないと説明。イランのタスニム通信は、文書はなお最終化も確認もされていないと伝えた。金曜早朝時点で、米ドル指数は99.00近辺で横ばい、米株価指数先物は小幅高。独5月CPI速報値とカナダ1-3月期GDPが予定され、その後は複数のFRB当局者の講演が控える。
米国データはまちまちだった。米商務省経済分析局(BEA)によれば、4月のPCEインフレ率は3.5%から3.8%に上昇。コアPCEは3.3%に上昇し、前月比ではそれぞれ0.4%、0.2%の伸びとなった。また同局は、1-3月期GDP(年率)の伸び率を2%から1.6%へ下方改定した。金は一時4,370ドルを下回った後に上昇して引け、金曜には4,520ドルを上回った。EUR/USDは約0.2%上昇後に1.1650を割り込む場面があり、ECBのCESはインフレ率が2%近辺にあるとの見方を示した。USD/JPYは、日本の木原稔官房長官の発言後も159.00を上回って推移。GBP/USDは1.3400を上回り、AUD/USDは0.3%上昇後に0.7150をやや上回った。
地政学動向と市場ドライバー
米国とイランの潜在的な合意が、地政学リスク・プレミアムを低下させる主要因になるとみる。短期的には米ドル安を示唆し、リスク資産を下支えする。デリバティブ投資家は、紛争継続を前提にした「安全資産」取引のエクスポージャーを縮小することを検討すべきだ。
この動きは、日量で世界の石油液体の約21%が通過するホルムズ海峡の再開を通じて、エネルギー市場に直接波及する。原油価格には大きな上値抑制要因となり、原油先物のロングは魅力が薄れると考える。想定される価格上限を収益機会にする戦略として、WTIまたはブレントのアウト・オブ・ザ・マネーのコール売りは有効となり得る。
米国内の経済力学と資産戦略
一方、米国内の状況はFRBにとって大きなジレンマを生んでいる。最新のPCEが3.8%と高止まりする中で、GDP成長率が1.6%へ下方改定されたことはスタグフレーションを示唆する。対応が難しい局面であり、今後の講演で当局者のメッセージが不透明になれば、市場のボラティリティ上昇につながり得る。
弱い成長データを受け、金利市場は、インフレ指標が通常示唆するほどタカ派的ではないFRBを織り込みつつある。CME FedWatchツールのロジックに基づけば、将来の利上げ期待は後退しており、これが足元のドル安の説明材料となる。景気をこれ以上傷つけないために、FRBがより高いインフレを一定程度容認せざるを得ない局面を想定してポジショニングしている。
金が4,520ドルを上回る上昇は特に注目に値する。地政学的緊張の緩和よりも、インフレに市場の焦点が向いていることを示唆するからだ。金は「安全資産」としてよりも、粘着的なインフレと、よりハト派化し得るFRBに対する直接的なヘッジとして機能している。先物やオプションを通じて、金ロングの維持または積み増しを検討している。
この値動きは、他のリスク資産が苦戦する中でも金が堅調だった過去のスタグフレーション局面を想起させる。世界金協会(WGC)の最新データでも、各国中銀が引き続き金の大幅な純買い手であることが確認されており、価格の強固な下支えとなる。こうした基礎需要は、金に対する強気見通しを補強する。
為替では、日本当局による介入リスクを踏まえると、159.00近辺でのUSD/JPYロングには極めて慎重だ。突発的かつ急激な下落リスクが高まっており、円に対するドルロングはヘッジが望ましい。JPYコールの購入は、このリスクに備えるコスト効率のよい手段となり得る。
最後に、中東情勢の緩和は、今後数週間でCBOEボラティリティ指数(VIX)を直近高値から押し下げる可能性が高い。主要株価指数のオプション売りによる「ボラティリティ売り」の好機となり得る一方、米国のインフレリスクが残るため慎重さが必要だ。ボラティリティ低下で利益を狙いつつ、リスクが限定される戦略を推奨する。
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