AUD/USDは強気の窓開けで取引を開始した後に小幅安となったものの、プラス圏を維持し、金曜のアジア時間には0.7160近辺で推移した。豪ドルは、豪準備銀行(RBA)の追加利上げ観測が大幅に下方修正されたことを受けて弱含み、豪ドル/米ドルの上値を圧迫した。4月のインフレ指標が予想以上に鈍化し、個人消費の弱さや労働市場の冷え込みも重なったことで、市場では「これまでのRBAの引き締め効果が波及している」との見方が強まり、6月利上げ確率が急速に再評価(大幅に低下)された。材料面では、来週公表予定の製造業PMI調査、貿易収支、GDP統計が、景気モメンタムを見極めるうえで焦点となる。
外部要因はまちまちだった。リスクセンチメントは一定の下支えとなった一方、原油価格は、米国とイランが暫定的に60日間の停戦延長で合意する可能性が報じられたことを受けて軟化した。同案ではホルムズ海峡を通じた輸送の制限撤廃が認められ、イランは30日以内に海上機雷をすべて除去する用意があるとも伝えられる。ただし、最終合意に至るかどうか不透明感は残る。MUFG銀行は、交渉が決裂した場合は米ドル高余地があると指摘する。混乱再燃はインフレ上振れリスクを通じて米国債利回りの上昇を招き、米連邦準備制度理事会(FRB)のスタンスをよりタカ派に傾ける可能性があるためだ。
RBA観測と国内指標が豪ドルの重し
豪ドルの主因となる弱材料は、RBAに対する市場の期待の変化にある。市場の織り込みでは、6月利上げの確率は足元で15%程度にとどまり、先月の70%超から劇的に低下した。金利差を根拠に豪ドルのロングを正当化しにくい状況となっている。
先行きは、景気減速の確認材料として来週のGDP統計が最大の注目点となる。豪統計局(ABS)が公表した最新の月次CPI指標ではインフレ率が3.1%まで低下し、2024年を通じて見られた低調な成長に近い形で、冷却基調が持続していることを示唆する。したがって、予想以上に弱いデータが出れば、豪ドル/米ドルは0.7000方向への下落が加速するとみる。
地政学リスクと取引戦略
米・イラン間の60日停戦の可能性は不確実性を大きく高め、短期的には相場の下値を支える要因になり得る。合意が成立すれば原油安とリスクセンチメントの改善につながり、リスク感応度の高い豪ドルには一時的な追い風となりそうだ。ただし、合意は未確定であり、このサポートは脆弱だと考える。
地政学リスクが「成立か決裂か」の二分的な様相を帯びる中、大きな値動きに利益機会を見いだせる戦略を検討すべきだろう。1カ月物AUD/USDオプションのインプライド・ボラティリティはすでに3カ月ぶり高水準の9.5%に上昇しており、市場がブレイクアウトに備えていることを示す。停戦が不成立となり米ドル高が進む局面に備えるには、プットオプションの購入が下方ブレイクにポジションを取る明確な手段となる。
合意に至らない場合、中東情勢の緊張局面で過去に見られたようにエネルギーコストが急騰し、市場を攪乱するシナリオが浮上し得る。これはFRBの政策運営にも逆風となる。足元の米コアPCEインフレ率は2.8%を上回って高止まりしており、供給ショックはインフレ圧力を強めかねない。この場合、FRBはタカ派的な対応を迫られ、米国債利回りの上昇を通じて米ドルの押し上げ要因となる可能性が高い。
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