金(ゴールド)は週明け月曜日、3月30日以来の安値水準を付けた後も4,550ドルを下回って推移した。地政学リスク(国際情勢の緊張による市場不安)が続く中、原油高がインフレ懸念を強め、米金融政策がより引き締まるとの見方(利上げ観測)も重なり、米ドルへの需要は底堅かった。
UAE(アラブ首長国連邦)のバラカ原子力発電所でドローン攻撃により火災が発生。サウジアラビアは、イラクから発射されたドローン3機を迎撃したと発表した。トランプ米大統領は、イランに対して合意に向けて迅速に動くよう警告した。
ドル高が金の重し
米国によるイラン港湾の封鎖と、ホルムズ海峡の実質的な閉鎖が原油価格を2週間ぶり高値へ押し上げた。CMEグループの「FedWatchツール」(先物市場の価格から米FRBの利上げ確率を推計する指標)では、年内の利上げ確率が50%超と織り込まれており、米国債利回り(国債の利回り=金利)とドルの支援材料となっている。
市場は、水曜日公表予定のFOMC議事要旨(米連邦公開市場委員会の会合内容をまとめた文書)と、今週発表される各国の速報PMI(購買担当者景気指数:企業調査に基づく景気の先行指標)に注目している。地政学情勢は変動(価格の振れ)を高め、金相場にも影響し続ける可能性がある。
現物市場では、インドのディスカウント(国際価格に対する値引き)が先週、過去最高水準に達した一方、中国のプレミアム(上乗せ幅)は底堅かった。ただし、これらは価格の明確な下支え要因にはなっていない。
テクニカル面(チャート分析)では、先週の100日SMA(単純移動平均線:一定期間の平均価格を示す線)付近で上値を抑えられたことに続き、4,500ドルを割り込むと下落リスクが高まる。RSI(相対力指数:買われ過ぎ・売られ過ぎを測る指標)は40近辺、MACD(移動平均収束拡散:トレンドの強さや転換を示す指標)はマイナス圏にある。下値支持は200日SMAの4,352.59ドル、上値抵抗は100日SMAの4,790.55ドル。
下落に備えるオプション戦略
現状は米ドルに強い追い風が吹いており、金には大きな下押し圧力がかかっている。中東情勢の緊張でドルの「安全資産」としての魅力が金より強まっているため、金の上値余地は限られるとみる。デリバティブ(金融派生商品:原資産価格に連動する取引)では、さらなる下落に備え、プット・オプション(一定価格で売る権利)で200日移動平均線への下落局面を狙う戦略が分かりやすい。
ホルムズ海峡の閉鎖を受け、WTI原油(米国産の代表的原油指標)が1バレル110ドル近辺で推移し、インフレ懸念を強めている。4月のCPI(消費者物価指数:物価上昇率を示す統計)では総合インフレ率が3.8%へ上昇。FedWatchツールは9月までの利上げ確率を62%と示している。この見通しにより、米10年国債利回りは4.75%を上回って底堅く、金を保有する不利(利息が付かない金を持つ機会損失)を大きくしている。
先週、4,790ドル前後の100日移動平均線を上抜けられなかったことは、売り手が主導していることを示す。この水準は強い上値の壁となり、コール・オプション(一定価格で買う権利)の売りや、ベア・コール・スプレッド(上昇が限定的と見てコールを組み合わせる戦略)で意識されやすい行使価格(オプションを行使できる価格)といえる。200日SMAの4,352ドルを明確に割り込めば、下落トレンドが一段進み、追加の売りを招く可能性がある。
2022年にも、FRBの急速な利上げ局面が地政学リスクを上回って意識され、ウクライナ情勢が続く中でも金が下落した例があった。中央銀行(FRB)がこのように強硬姿勢(タカ派:インフレ抑制を重視し利上げに前向き)を示す局面では、ドル高と金利上昇が金の支援材料を押しのけやすい。足元は下方向が優勢とみる。