S&P500は日中に下値を支えたものの引けにかけて下落し、ナスダックは当日の安値を上回って推移した。3月下旬の底入れ以降、資金は引き続きハイテク株に向かったが、上昇は一部銘柄に偏り、市場の広がり(多くの銘柄が一緒に上がっているかどうか)は弱いとの見方が残った。
ホルムズ海峡を巡る地政学ニュースは報道の中心から後退した一方、景気後退(リセッション)の明確な兆候がない米経済とともにインフレ懸念は強まった。決算は堅調だが、株価の動きは全面買いというより銘柄選別の需要を示した。
労働市場シグナルが弱まる
労働市場データには弱い内容がみられた。企業の新設・廃業を推計で補う「出生・死亡モデル(統計上の補正手法)」が前月の主要指標を押し上げた影響、労働参加率(働く意思のある人の比率)の低下、時間当たり賃金の伸び鈍化が確認された。フルタイム雇用の減少や、U6失業率(失業者に加え、職探しを諦めた人や短時間就労の不本意層も含む広い失業指標)の上昇もあり、雇用環境の悪化が消費者心理の重しとなった。
トランプ—習会談の終了後も、米国債利回りと米ドルは上昇基調を維持し、リスク資産への圧力が強まった。株式の相対的な魅力は、株式リスクプレミアム(株式が国債より上乗せで求められるリターン)の低下を通じて薄れた。株式は寄り付き後の早い時間帯の下げを縮小したが、引けにかけて弱含み、貴金属も軟化した。
直近のセクター動向では、AI(人工知能)とハイテクが強い一方、金融、一般消費財(景気に左右されやすい消費関連)が弱かった。こうした動きは単発の材料による反応ではなく、二極化した景気といった説明にも当てはまらないとされた。
市場では、S&P500の強さが実態を映しにくく、ナスダックの方が持ちこたえるというパターンが続く。実際、S&P500等ウェート指数(時価総額ではなく各銘柄を同じ比率で組み入れる指数)は年初来で主要指数を4%超下回り、少数の巨大ハイテクが上昇を支えていることが示された。トレーダーは、ハイテクの主力銘柄のコールオプション(将来、決められた価格で買う権利)を検討しつつ、ラッセル2000のような弱い広範指数にはプットオプション(将来、決められた価格で売る権利)でヘッジする手もある。
インフレ動向とオプションのポジショニング
2025年に観測されたように、市場は「インフレが長引く一方で、米景気は減速しても崩れない」状況を織り込んでいる。直近の2026年4月のCPI(消費者物価指数=家計が買うモノ・サービスの値段の上昇率)が3.8%と高止まりし、1—3月期GDP(国内総生産=経済の規模を示す指標)成長率が1.1%へ下方改定されたことで、変動性(ボラティリティ=価格変動の大きさ)が高まりやすい。こうした環境では、コモディティETF(商品先物などに連動し、上場して売買できる投資信託)のオプションをインフレヘッジ(物価上昇への備え)として使う選択肢がある。
昨年指摘された雇用の弱さは、消費者の重しとしてより明確になっている。失業率は4.1%に上昇し、フルタイム雇用の増加が鈍化している。家計の購買力が削られやすく、一般消費財ETFのプットが機会となり得る。
利回りと米ドルの上昇は、引き続き株式にとって最大の逆風だ。10年米国債利回りは4.7%超で推移し、リスクの小さい国債(政府が発行する債券)の魅力が増すことで、株式のバリュエーション(株価水準の割高・割安評価)に下押し圧力がかかる。こうした局面では、債券ETF(例:TLT=米長期国債に連動)のプットで「金利が高止まりする」リスクを意識する戦略も考えられる。
セクター間の差は続き、AI・ハイテクが優位な一方、金融や消費関連は苦戦している。年初来でテクノロジー・セクターETF(XLK)は15%超上昇し、金融セクターETF(XLF)はほぼ横ばいだ。これを踏まえ、ペアトレード(強い資産を買い、弱い資産を売る組み合わせ)の一例として、半導体ETFのコールと、地銀関連ファンドのプットを組み合わせる手法がある。