ロンドン金属取引所(LME)で銅が過去最高値を更新し、価格は1トン当たり1万4,000米ドルを上回った。エネルギー価格の上昇にもかかわらず、LMEのベースメタル指数(銅やアルミニウムなど主要な工業用金属の値動きをまとめた指数)も今週、最高値を付けた。エネルギー転換(再生可能エネルギーや電気自動車〈EV〉への移行)やデータセンター関連の需要が相場を支える要因として挙げられ、銅鉱石(精錬前の原料)の供給が逼迫する懸念も意識された。
米商務省は6月末までに、既存の関税を精製銅(不純物を取り除いて工業用に使える形にした銅)にも拡大するかどうか判断する見通しだ。提案では、2027年1月1日から15%の関税を課し、1年後に30%へ引き上げるとしている。
米国の銅輸入は昨年ほぼ倍増した。関税導入の可能性を見越した「備蓄」(将来の値上がりや供給不足に備えて在庫を積み増す動き)が背景にある。4月中旬以降、COMEX(米商品先物取引所の金属市場)の在庫は再び増加し、米国外の供給余力を細らせている。
来週公表予定の中国の生産統計は注目されそうだ。
2025年の分析を振り返ると、当時想定した状況が現実になりつつある。精製銅への米関税は開始まで半年強に迫っており、備蓄の流れが米国外で利用可能な供給を大きく吸い上げた。この需給の引き締まりが、現在の相場の強さを支える基礎要因となっている。
供給面では状況が深刻化している。LME在庫は足元で5万5,000トンを下回り、2008年以来の低水準となった。これは、COMEXでの備蓄が世界市場を逼迫させるという昨年の懸念を裏付ける動きだ。価格が1トン当たり1万3,800ドル近辺で推移するなか、市場は新たな供給障害(鉱山トラブルや物流停滞など)に極めて敏感になっている。
需要面でも、材料は一段と強まった。AI(人工知能)向けデータセンターの建設拡大と、EVへの移行加速が追い風となっている。直近データでは、2026年1〜3月の世界EV販売は前年同期比22%増。さらに、中国の4月製造業PMI(購買担当者景気指数:企業の受注や生産などの調査から景況感を示す指標)が市場予想を上回り、堅調な工業需要の継続を示唆した。構造的な需要要因は引き続き強い。
供給逼迫と強い需要という強気の環境を踏まえると、今後数週間の一段高に備え、コール・オプション(特定の価格で買う権利)を検討したい。2026年第3四半期満期の契約に焦点を当てれば、関税期限が近づくにつれて供給逼迫が強まる時間を確保できる。強気のコール・スプレッド(高い行使価格のコールを売って費用を抑える組み合わせ)も、値動きが荒い局面でコストを管理する手段となる。
LMEとCOMEXの週間在庫統計を継続的に確認し、備蓄の動きに想定外の変化がないか見極める必要がある。加えて、中国の工業活動が鈍化する兆しが出れば、短期的な逆風となり得る。ただし、主要なトレンドは上向きで、市場は2027年の関税を織り込みに向かっている。