日銀の増田和幸審議委員は、イランでの戦争が引き金となるエネルギー価格の急騰(エネルギーショック)が、日本経済に1973年の石油危機(オイルショック)以上の打撃を与える可能性があるとして、警戒が必要だと述べた。
また、日本のインフレ(物価上昇)は、人件費の上昇、物流・配送コストの上昇、円安の影響によって形作られていると指摘した。
Iran Conflict Energy Shock Risk
食料品価格は、長期で見れば将来のインフレを左右する重要な要因だと述べた。
日本はもはやデフレ(物価が下がり続ける状態)ではなく、実質金利(名目金利から物価上昇率を差し引いた金利)がマイナスの状況はできるだけ早く是正すべきだとも語った。
政策金利が推定される中立金利(景気を過熱も冷やしもしない金利水準)に近い水準にあるため、日銀は追加の対応を決める前に、物価、雇用、金融環境(資金調達のしやすさや市場の安定度)をより丁寧に見極めるべきだとした。
執筆時点でドル円(USD/JPY)は157.85と、前日比0.02%安。
Market Positioning And Volatility
イラン情勢によるエネルギーショックは、1973年の危機より日本に深刻となる恐れがある。WTI原油先物(米国産原油の代表的な指標)の価格はこの四半期に1バレル125ドルを超えるまで上昇しており、1973年には景気が後退(リセッション)する一方で、インフレ率が20%超まで急上昇した。足元で最大の懸念はスタグフレーション(物価が上がるのに景気が伸びない状態)リスクだ。
インフレが家計や企業活動に定着しつつある中、日銀には対応圧力が強まっている。日本のコアCPI(生鮮食品を除いた消費者物価指数)は2026年4月に3.1%となり、日銀目標の2%を25カ月連続で上回った。この物価上昇の継続は、実質金利のマイナスを解消するための追加の金融引き締め(利上げなど)が必要との見方を補強する。
為替市場では、1ドル=158円近辺の円安は、日銀が強い対応を迫られる場合には持続しにくい。円高方向で利益を狙う選択肢として、円コール(円高で価値が上がる通貨オプション)を買う、ドル円のプット・スプレッド(下落に備えるオプションの組み合わせで、コストと利益を限定する手法)を用いるといった戦略が考えられる。景気指標が入り混じる状況では、通貨市場でボラティリティ(価格変動の大きさ)を買うことも有効だ。
スタグフレーションは日本株の重しとなりやすい。エネルギーコストの上昇が企業利益率を圧迫し、日銀の利上げ観測も加わることで、日経平均(Nikkei 225)には下押し圧力がかかりやすい。指数のプット(下落に備えるオプション)購入は、下落局面への備えとなり得る。
一方で、政策金利が中立金利に近いとの見方は、日銀が景気を傷つけずにどこまで利上げできるかを制約する可能性がある。2025年後半のサプライズの政策修正(市場の想定より踏み込んだ変更)を踏まえると、日銀が迅速に動くこともあるが、先行きの道筋は見えにくい。インフレ抑制と景気後退回避の間で不確実性が大きいため、デリバティブ(先物やオプションなど、価格変動を利用する金融商品)のポジションはリスク管理を徹底したい。