米ドル指数(DXY)は、米国の消費者物価指数(CPI、消費者が購入する品目の価格の平均的な変化を示す指標)の発表を前に、市場が様子見となる中で97.96へ小幅に上昇した。米国株は小幅高となり、ハイテク株(情報技術関連株)がけん引した。
米国債利回り(国債の利息収入の割合。一般に上昇は債券価格の下落を意味する)は全期間で5〜7bp(ベーシスポイント=0.01%)上昇した。背景には原油高と、米国・イランの早期和平合意への期待後退がある。市場は米連邦準備制度理事会(FRB、米国の中央銀行に当たる機関)による年内利下げをほぼ織り込んでいない。
注目はインフレ指標
今後の主な発表はADP雇用者数(民間給与計算会社ADPが推計する米民間部門の雇用者数の増減)と4月CPI。市場予想ではCPIは前年同月比3.7%(前回3.3%)に加速し、コアCPI(食品・エネルギーを除いた物価。振れが大きい項目を除いて基調をみる指標)は2.7%(前回2.6%)が見込まれている。
トランプ大統領は、国内の燃料費を抑える狙いでガソリン税の一時停止を支持した。5月13〜15日に北京で習近平国家主席と会談する予定。
議題には中東情勢、中国によるイラン産原油購入、ホルムズ海峡(中東の主要な原油輸送ルート)の再開に関する協議が含まれる見通しだ。ほかに、貿易休戦の維持、二国間の「貿易委員会」(通商協議の枠組み)構想、AI安全性(人工知能の悪用や誤作動を防ぐためのルールや技術)、台湾問題も取り上げられる可能性がある。
市場は今週の米CPI発表を前に神経質だ。米ドル指数は106近辺で底堅く推移し、市場予想は総合インフレ率が前年同月比3.1%に達するとみている。インフレが強いとの見方が強まる局面で、ドルが先回りで買われる展開に近い。
CPI前の市場の構え
慎重姿勢を反映し、米国債利回りは上昇し、10年債利回りは4.6%を上回る水準まで上げた。先物市場の動きとして、CME FedWatch(CMEが金利先物価格から利上げ・利下げ確率を推計する指標)では、9月までの利下げ確率が40%を下回った。市場は短期的な金融緩和(中央銀行が金利を下げ、資金供給を通じて景気を支える政策)の可能性を後退させている。
地政学リスクも影響している。紅海での供給網の混乱再燃を受け、WTI原油(米国の代表的な原油指標。価格はインフレに影響しやすい)は1バレル90ドル近辺まで持ち直した。エネルギーコストの上昇はインフレ見通しを押し上げ、債券利回りの上昇要因となる。国際紛争が国内の経済指標に波及し得ることを改めて示している。
市場参加者にとっては変動拡大の兆しだが、VIX(S&P500の予想変動率。恐怖指数とも呼ばれる)は14近辺と低水準にとどまる。重要なインフレ指標と地政学リスクを踏まえると、VIXコールオプション(将来、一定価格で買う権利。価格上昇=変動率上昇に備える手段)や、主要株価指数でのコラ―(オプションを組み合わせて損益の範囲を限定する戦略)による保険が選択肢となる。CPIが予想より高ければ、この落ち着きは続かない可能性がある。
為替では、インフレ指標が警戒感を裏付ければ、ドル高が続きやすい。資源輸入国通貨に対する米ドルのコールオプション(ドルを買う権利)――例えば日本円やユーロ――は、この見通しを直接反映しやすい手段だ。ドルは利回り上昇に加え、安全資産(リスク回避局面で買われやすい資産)としての位置付けでも支えられている。