米ドル指数(DXY)は、投資家のリスク選好が改善し、安全資産(有事に買われやすい資産)への需要が後退したことで、97.90近辺へ下落した。報道によれば、米国とイランは新たな軍事的事案が起きる中でも、停戦の枠組み維持を模索しているという。
ドナルド・トランプ米大統領は協議が継続しており、双方がホルムズ海峡周辺での事態悪化を避けようとしていると述べた。原油は上昇幅を縮小し、インフレ再燃(物価上昇が再び強まること)への懸念が和らいだ。
労働統計とリスク選好
米雇用統計(非農業部門雇用者数、農業以外の雇用増減を示す指標)では、4月の雇用者数が前月比+11.5万人と、市場予想の約+6万人を上回った。失業率は4.3%で横ばいだった。平均時給(賃金の伸びを示す指標)は前月比で伸びが鈍化し、ミシガン大学の消費者態度指数(消費者心理の指標)は大きく悪化。米国債利回り(国債の利回り。金利の代表的な指標)も低下した。
ユーロ/ドル(EUR/USD)は1.1780近辺、ポンド/ドル(GBP/USD)は1.3620近辺で推移し、ドル/円(USD/JPY)は156.60近辺へ下落。豪ドル/米ドル(AUD/USD)は0.7240近辺へ上昇した。
WTI原油(米国の代表的な原油指標)は高値から反落しつつも1バレル95.30ドル超を維持。市場はホルムズ海峡を通過するタンカーの停止が続くかを注視している。金(ゴールド)は4,720ドル近辺で推移した。
市場は5月11〜15日にかけて発表される米CPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)、小売売上高、新規失業保険申請件数、鉱工業生産のほか、ユーロ圏HICP(消費者物価の統一指数)、GDP、英国のGDPと生産指標に注目している。講演予定にはECB(欧州中央銀行)とFRB(米連邦準備制度理事会)の当局者、英中銀(BoE)のマン委員が含まれる。
戦略とポジション
米ドル指数は弱含み、97.90近辺まで下げている。中東の地政学リスクが落ち着きつつあるとの見方から、2週間前に100.50近辺まで上昇した局面と比べ、安全資産としての米ドル需要が低下していることを示す。雇用統計で賃金の伸びが鈍化したことも、インフレ圧力の緩和を示唆し、米ドルの魅力を押し下げやすい。
ユーロやポンドに対して、米ドル安が続く前提のポジションを検討したい。EUR/USD(現在1.1780近辺)のオプション戦略(将来の売買権利を使って損益を調整する手法)は選択肢になり得る。エネルギー価格の変動が続けば、ECBが利下げ(政策金利の引き下げ)を大きく進めにくい可能性があるためだ。これは2022〜2023年のインフレ局面のように、中銀が想定以上に警戒姿勢を長引かせた状況を思い起こさせる。
円も底堅く、USD/JPYは156.60近辺へ下落している。米国債利回りの低下が背景にあり、米10年債利回り(長期金利の代表)はこの1週間で3.85%を下回った。日米金利差(米国と日本の金利の差)が縮小することで、円を保有する魅力が相対的に高まる。リスク選好が改善する局面でも、USD/JPYのプット(下落に備えるオプション)には妙味が出やすい。
ただし、来週の米インフレ指標を前に慎重さが必要だ。火曜日のCPIが最大の注目材料で、上振れ(予想より強い結果)なら米ドルの下げが急反転し得る。市場予想ではコアCPI(食品・エネルギーを除く物価)が前月比+0.2%だが、今年1〜3月は上振れが続いた経緯があり、米ドル売りのポジションにはヘッジ(損失を抑える備え)が必要になる。
原油は依然として不確実性が大きい。外交面の進展があってもWTIは1バレル95.30ドル超で推移している。2025年に見られた紅海での混乱を踏まえると、供給ルート(輸送経路)は短期間で脅かされ得る。停戦の枠組みが崩れる事態に備え、WTIのアウト・オブ・ザ・マネーのコール(現在価格から離れた水準の上昇に備えるオプション)を購入することは、有効なヘッジになり得る。
金は4,720ドル近辺で持ち合い(一定の範囲で上下する状態)。米金利低下の恩恵を受ける一方、リスク選好の改善が上値を抑えている。年初に4,800ドル超の高値を付けた後に下げたが、下値は支えられている。来週のCPIが弱めなら実質金利(名目金利から物価上昇率を差し引いた金利)がさらに低下し、金が高値を試す材料になりやすい。