金(XAU/USD)は木曜日、序盤の上昇分の一部を失った。ホルムズ海峡を巡る緊張が続く中で、米ドルと原油価格が持ち直したためだ。金は約4,764ドルと2週間ぶり高値を付けた後、4,712ドル近辺で推移した。
イランは、世界の原油輸送量の約20%が通過するホルムズ海峡を航行する船舶に新たな規則を導入した。報道によると、商船はイラン軍当局と航行(通過)の調整を行う必要があり、先行報道では通行料が約200万ドルになる可能性も示されている。
中東協議と航行ルール
テヘランは、中東の戦争終結に関連する米国主導の提案を検討している。ドナルド・トランプ米大統領は、直近24時間の協議は「非常に良かった」と述べ、合意は「十分にあり得る」とした。
米連邦準備制度理事会(FRB、米国の中央銀行)当局者は、利下げを急がない姿勢を示している。ボストン連銀のスーザン・コリンズ総裁は、政策金利を据え置く期間が「より長く」必要になる可能性があると述べ、物価上振れ(インフレ悪化)の確率が高まったと指摘した。利上げがあり得るとの見方も示した。
米指標では、新規失業保険申請件数(失業者が給付を申請した件数)が5月2日終了週に20.0万件となり、前週の19.0万件から増加した一方、市場予想の20.5万件は下回った。ADP全米雇用報告(民間部門の雇用者数の推計)では、4月の民間雇用者数が前月比10.9万人増となり、3月の6.1万人増、予想の9.9万人増を上回った。金曜日の米雇用統計(NFP、非農業部門雇用者数)を前に注目された。
テクニカル面では、金は200日単純移動平均線(SMA、過去一定期間の平均価格を線で示す指標)の4,307ドル近辺は上回る一方、100日SMAの4,774ドル前後、50日SMAの4,790ドル近辺は下回っている。RSI(相対力指数、買われ過ぎ・売られ過ぎを測る指標)は53近辺、ADX(平均方向性指数、トレンドの強さを示す指標)は21近辺。上値抵抗は4,774ドル、4,790ドル、4,850ドル、下値支持は4,500ドルと4,307ドルに位置する。
NFP(米雇用統計)を前にした価格変動(ボラティリティ)戦略
足元の市場は、地政学リスクと金融政策が綱引きとなり、金価格は狭いレンジに押し込まれている。ホルムズ海峡の緊張で安全資産としての需要が意識される一方、FRBが高金利を維持する姿勢は金に強い逆風となる。このため、先物(将来の価格をあらかじめ決めて売買する取引)での単純な買い持ち・売り持ちは、短期的にリスクが高い。
より有効なのは、明日発表のNFP(非農業部門雇用者数)を前に、価格変動そのものを狙うことだ。雇用指標が市場予想を大きく上回る(強い)または下回る(弱い)結果になれば、現在の保ち合いを抜ける可能性がある。ロング・ストラドル(同じ行使価格・同じ期限のコールとプットを同時に買い、どちらの方向でも大きく動けば利益を狙う手法)などのオプション戦略(将来一定の価格で買う・売る権利を売買する取引)で、上下いずれの大きな動きにも対応しやすい。金オプションのインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の変動率)は18%近辺で、市場の警戒感を反映している。
ホルムズ海峡は、世界の日量原油供給の約5分の1を左右するため、上方向の最大材料になりやすい。2023年末から2024年前半の紅海での混乱では、海上輸送保険料と原油価格が押し上げられる状況が続いた。イランが実際に航行を妨げる、あるいは通行料を課す動きが出れば、金は4,850ドルの上値抵抗を上抜けする可能性がある。
一方で、FRBのタカ派姿勢(インフレ抑制を優先し金利を高めに維持する立場)も軽視できない。当局者はインフレ再燃を警戒している。過去を振り返ると、2024~2025年は金融引き締めが続いてもコアインフレ(食品・エネルギーを除いた物価、基調的なインフレを示す指標)が3%を上回る状態が長引いた。雇用統計が強ければ「高金利が長期化(higher-for-longer)」との見方が強まり、金は4,500ドルの下値支持の試しへ向かう恐れがある。
このように相反する材料が並ぶ中、リスクを限定しやすい戦略に妙味がある。膠着が続くとみる場合、4,500~4,850ドルのレンジ外に権利行使価格(ストライク)を置いたアイアン・コンドル(上昇・下落の両方向で損失が限定され、一定範囲の横ばいで利益を狙うオプションの組み合わせ)を売る選択肢もある。ただし、今後数週間で材料が出る可能性を踏まえると、横ばい継続よりも、レンジからの離脱(ブレイクアウト)に備える方が妥当とみられる。