金(ゴールド)は、イラン情勢に関連した原油高(オイルショック)、インフレ予想(将来の物価上昇見通し)の上昇、米ドル高を背景に下落している。これらは、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締め(高金利政策)を「より長く」続けるとの見方を後押しする。
長期のテクニカル面の下値支持線(サポート)は、1オンス当たり4,288~4,000ドルに位置する。原油が1バレル150ドル超へ急騰した場合、金がこの支持帯に向けて下落する可能性がある。
Bearish Strategies For The Coming Weeks
想定される回復シナリオは、イラン情勢が落ち着き、原油高によるインフレ圧力が弱まることが前提となる。その場合、金は上昇基調に戻り、2026年後半までに5,200ドル超へ伸びると見込まれる。
上昇に必要な条件として、長期金利(米国債利回り)の低下、米ドル安、そしてFRBが「物価抑制」よりも雇用重視(最大雇用という目的)へ軸足を移すことが挙げられる。また、投資家(買い手)や中央銀行の買い需要が再び強まることも、上昇要因になり得るとしている。
金の直近の下落は、イラン情勢に伴う原油ショックが引き金となり、インフレ懸念を押し上げ、米ドル高を招いていることが背景にある。この状況は、FRBが政策金利を高水準で長く維持する可能性を示す。デリバティブ(金融派生商品。オプションなど)を使う投資家は、近く1オンス当たり4,288~4,000ドルの強い長期サポートを試す展開を想定しておきたい。
Positioning For A Longer Term Recovery
この見方は、2026年4月の消費者物価指数(CPI。物価の伸びを示す代表指標)が3.9%と高止まりしているというデータにも支えられる。主因はエネルギーコストで、WTI原油(米国指標の原油価格)が1バレル110ドル前後で推移しているためだ。さらに、ドル指数(DXY。主要通貨に対するドルの強さを示す指数)は107.50まで上昇し、FRBがタカ派(インフレ抑制を優先し高金利を維持する姿勢)であるとの市場見方を映している。一般に金は、高金利・ドル高の環境では上値が重くなりやすく、これらは逆風となる。
今後数週間は、金がサポート帯へにじり寄る中、弱気戦略が有利になり得る。具体的には、プットオプション(価格下落で利益を狙う権利)の買い、またはベア・コール・スプレッド(上値を限定しつつ下落局面での収益機会を狙うオプション組み合わせ)を検討し、満期は2026年7月または8月を想定する。重要なのは原油価格で、1バレル150ドルに向けた上昇が続けば、金の下落が加速し、4,000ドル前半まで押し込まれる公算が大きい。
2025年時点から振り返ると、1980年代初頭には、ポール・ボルカー議長の下でFRBが原油ショック由来のインフレに対応し、大幅な利上げを実施した。当時、金は実質金利(名目金利からインフレ率を差し引いた金利)の上昇圧力でいったん下落したが、その後、金融政策が緩和へ向かうと大きく反発した。足元でも、短期的な痛みの後に長期の好機が訪れる、似た構図になる可能性がある。
金が4,000~4,288ドルに近づく局面では、強気への転換(反転上昇)に焦点を移す局面となる。上昇のきっかけは、イラン情勢の沈静化と、インフレがピークアウト(伸び率が頭打ち)し始めた兆候であり、FRBが政策転換(利下げ方向への見直し)を検討できる環境が整うことだ。この段階では、弱気ポジションの縮小を進め、上方向への大きな動きに備えたい。
2026年後半に5,200ドルを目標とする回復局面に備えるには、長期のコールオプション(価格上昇で利益を狙う権利)の積み増しを検討する。例えば、行使価格(権利行使の基準価格)を4,800ドルまたは5,000ドル付近とし、満期を2026年12月または2027年3月に設定すれば、金利低下とドル安が進む局面で上昇の恩恵を得やすい。オプションは損失が支払ったプレミアム(オプション料)に限定され、リスクを管理しやすい。
この長期強気の見方は、中央銀行の継続的な買い需要でも裏付けられる。中央銀行は2024年と2025年の双方で、外貨準備(保有資産)に1,000トン超の金を追加した。今後は、2026年6月の米連邦公開市場委員会(FOMC。FRBの政策決定会合)と第2四半期の国内総生産(GDP。景気の総合指標)を注視し、FRBが雇用支援へ再び重心を移す兆しがあるかを見極めたい。そうした転換が確認できれば、金の次の大きな上昇局面に向けて積極的にポジションを構築する主要シグナルとなる。