フランソワ・ビルロワドガロー仏中銀総裁(欧州中央銀行〈ECB〉の政策決定者)は木曜日、中央銀行は金融政策の変更を、あらかじめ決めた日程ではなく、経済データに基づいて判断すべきだと述べた。
同氏は、政策判断は「データ(公表される経済指標)」に導かれるべきだとし、将来の政策方針を先に示して市場を誘導する発信(フォワードガイダンス=中央銀行が将来の政策見通しを示すこと)に似たメッセージには注意が必要だと警告した。
市場は同氏の発言に対し、ユーロで目立った反応を示さなかった。EUR/USD(ユーロ/米ドル)は0.2%高の1.1775近辺で推移し、米ドル安が背景にあった。
データ重視の環境では、特定のECB会合で利下げが行われると一律に織り込む(価格に反映させる)ことは難しくなる。代わりに、会合前に予定される重要指標(市場への影響が大きい指標)に焦点が移る。
その結果、主要な経済指標の発表前後で相場の変動(ボラティリティ=価格の振れの大きさ)が高まりやすい。例えば、ユーロ圏のHICP(調和消費者物価指数=EU基準のインフレ指標)では2026年4月のインフレ率が2.6%と下がりにくい一方、1-3月期GDP(国内総生産=国全体の生産・所得の規模)の成長率は0.2%と弱かった。インフレと景気の方向がそろわないデータは不確実性を高め、上下どちらに動いても利益を狙う手法が意識されやすい。
こうした「データ次第」の局面では、主要な物価指標や雇用指標の前にEUR/USDでストラドル(同じ満期・同じ権利行使価格のコールとプットを同時に買う戦略で、大きく動けば方向を問わず利益を狙う)などでボラティリティの上昇を買う発想が出やすい。2026年5月7日時点でEVZ(Cboeユーロ通貨ボラティリティ指数=ユーロ関連オプションの予想変動率を示す指標)は6.8と相対的に中程度で、指標のサプライズ(市場予想との差)で急上昇する余地がある。
また、米国では雇用の強さが利下げ観測の後退につながりやすく、ECBとの政策の差(金融政策の方向性の違い)が意識される。こうした状況はEUR/USDの重しになり得るため、ユーロに中立〜下方向を見込む戦略が選好されやすい。
その場合の実務的な対応として、アウト・オブ・ザ・マネーのユーロのコール(権利行使価格が現在のレートより上で、現時点では行使しても得になりにくい買う権利)を売る、またはプット(売る権利)を買って下落リスクに備える手法が考えられる。ユーロがレンジ(一定の範囲)にとどまる、または欧州の弱いデータや米国の底堅さで下落する局面で効果が出やすく、「数字に従う」と明言する中央銀行の姿勢とも整合的だ。