BNYのジェフ・ユー氏は、中南米の外国為替(FX)と株式が、いまや「トータルリターン(配当や金利も含めた投資収益全体)」として一体のポジションで扱われていると指摘する。iFlowのデータでは、中南米のほぼ全通貨が「ネットで買われ過ぎ(保有が多すぎる状態)」のままだという。
同氏によれば、最近まで域内の国債市場(政府が発行する債券。ソブリン債)も総じて買われ過ぎだった。足元では国債の過剰保有が解消に向かい始めているが、その動きは国によって偏りがあるという。
Latam Crowded Trade Dynamics
メキシコでは、市場が利下げを見込み始めたことで、為替ヘッジ(為替変動による損失を避ける取引)の需要が増えている。今週のメキシコ中銀(Banxico)が25bp(ベーシスポイント=0.01%の単位)利下げするとの見方が広がる一方、メキシコ国債への需要は堅調だという。
ユー氏は、Banxicoが景気刺激・成長重視へと姿勢を移しつつあるとみられているとも述べる。また、実質金利(名目金利からインフレ率を差し引いた金利)の「上乗せ余地(バッファー)」が縮小しており、実質金利をプラスに保つには100bpが必要だとも指摘する。
さらに同氏は、米国要因による国別リスク(その国固有の不確実性)の上昇に言及する。市場の金融政策見通しが十分にハト派(利下げに前向き)でなくなった場合の影響が早く波及しやすいこと、今後の通商協議で問題が生じる可能性が背景にあるという。市場が将来の利下げ・利上げの方向ばかりに注目し続けるなら、為替ヘッジ需要は強まりやすい。一方、財政による景気押し上げ(財政インパルス)が大きくないため、債券は相対的に底堅い可能性があるとしている。
メキシコでは、今週のBanxico会合で政策金利が25bp引き下げられ、10.75%になるとの予想が一般的だ。4月のインフレ率が4.5%へ鈍化する中、成長を支える政策転換が意識され、ペソ安への備え(ヘッジ)を増やす参加者が増えている。それでも海外勢のメキシコ国債投資はおおむね堅調で、約750億ドル近辺を維持している。
Mexico Peso Hedging Strategy
その結果、「債券は買いたいが、ペソの方向性は不安」というねじれが生じている。中銀は昨年、通貨の魅力を高めた高い実質金利を引き下げつつある。金利面の余力を意図的に圧縮する動きは、内需支援のために通貨安をある程度容認する姿勢を示すものと受け止められやすい。
デリバティブ(金融派生商品。オプションや先物・フォワードなど)取引の観点では、メキシコペソ下落に備えたヘッジを増やす局面にある。具体的には、USD/MXNのコールオプション(特定価格でドルを買う権利)を買う、またはフォワード(将来の受け渡し価格を固定する取引)で保有資産の為替下落リスクに備えるといった手段が考えられる。コロナ後に目立った「スーパーペソ(ペソ高が継続する局面)」は勢いを失いつつある。
焦点は米国リスクだ。市場は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しを後退させ、2026年の利下げは1回程度との観測が強い。これはドル高要因となり、新興国通貨に下押し圧力がかかりやすい。これに通商交渉の不確実性が重なり、ペソには厳しい環境となる。
不確実性はオプション市場にも表れている。ペソの3カ月インプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の変動率)は年初の10%から12.5%超へ上昇した。この変動率を前提に、通貨が大きく動く局面で利益を狙う取引構成も可能だ。要点は、依然魅力が残る債券利回り(債券から得られる利息水準)と、通貨の下落リスクを切り分けて管理することにある。