金は水曜日の欧州時間序盤に1オンス=4,680ドルを上回り、1週間超ぶりの高値を付けた。月曜日に付けた約1カ月ぶり安値(4,500ドル近辺)からの反発局面が続き、米ドル安が追い風となった。
トランプ米大統領は火曜日、ホルムズ海峡から商船を誘導することを目的とする「プロジェクト・フリーダム」を、イランとの協議のため短期間停止すると述べた。さらにSNS「Truth Social(トゥルース・ソーシャル)」で、イラン側代表との合意に向けて進展があったとも投稿した。
地政学シグナルが金を下支え
ヘグセス国防長官は、米国は緊張の再燃を求めておらず、現時点では停戦が維持されていると述べた。ルビオ国務長官は、2月28日にイスラエルと開始した米主導の「オペレーション・エピック・フューリー」が終了したと説明した。
原油は1週間ぶり安値に下落。これによりインフレ(物価上昇)懸念が和らぎ、米金融政策の引き締め観測も後退した。CMEグループの「FedWatch(フェドウォッチ)ツール」(先物市場の価格から政策金利見通しを確率で示す指標)では、年末までの米利上げ確率が35%超と織り込まれている。
市場は、米ADP民間雇用統計(民間給与データに基づく雇用指標)、FOMCメンバーの発言、金曜日の米雇用統計(NFP:非農業部門雇用者数)に注目している。
テクニカル面では、金は200期間SMA(単純移動平均線:一定期間の平均価格)4,651.69ドルを上回って推移。RSI(相対力指数:買われすぎ・売られすぎを測る指標)は59近辺で、MACD(移動平均収束拡散法:トレンドの強弱を示す指標)のヒストグラム(差分の棒グラフ)は上向きでプラス圏にある。下値支持(サポート)水準は4,588.83ドル、4,495.62ドル、4,402.41ドル。
2025年の上昇局面から得られる示唆
2025年同時期を振り返ると、金は4,500ドル水準から大きな上昇局面に入った。米・イランの和平期待が高まり、米ドル安と原油安を招いたことが背景だった。市場心理は揺れていたが、テクニカル指標は上昇基調への回復を示していた。
その後、2025年5月以降の数週間で買いが続き、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ警戒は後退。年後半には中立寄り(政策姿勢を強めも弱めもしない)の姿勢が意識され、金の上昇を後押しした。地政学リスクの後退が、利息を生まない資産である金(無利息資産)へ資金を向かわせやすいことを示す場面でもあった。
足元で金は4,950ドル近辺で推移し、当時と状況は異なる。ただ、過去と似た要素もある。米消費者物価指数(CPI:家計が購入するモノやサービスの価格変動を示す指標)でみたインフレ率は3.1%まで鈍化した一方、FRB目標を上回る状態が続いている。次回利下げの時期が読みにくく、市場は神経質になっている。
こうした環境下では、デリバティブ(金融派生商品:価格が原資産に連動する取引)を扱う投資家は、オプション(一定価格で買う・売る権利)でリスク管理と上振れ余地の取り込みを検討し得る。CBOEの「VIX(恐怖指数:米株の予想変動率)」が相対的に低い14近辺にあるため、金ETFや先物のコール(買う権利)を購入する戦略はコストを抑えやすい。上昇局面に参加しながら、最大損失を限定できる点が特徴だ。
大きな動きの前に横ばい推移を見込む場合は、保有する金ポジションに対してカバードコール(現物・先物などを保有しつつコールを売る戦略)を行い、プレミアム(受け取るオプション料)収入を狙う方法がある。あるいは、金先物を使ったカレンダースプレッド(限月の異なるオプションや先物を組み合わせる取引)なら、短期は横ばいだが後に上昇すると見込む場合に収益機会が生まれやすい。手前の限月ほど時間価値が減りやすい(時間価値の減少)点を活用する。
主要リスクは、FRBの発言内容が想定外に変化し、金利見通しが急速に見直されて金が下落することだ。2025年当時はNFPが焦点だったが、現在もインフレと雇用の各指標が同様に重視されている。先物で買い持ち(ロング)を取る場合は、損失を限定するストップロス(損切り注文)を徹底する必要がある。