フィリピンの主要CPI(消費者物価指数)インフレ率は4月に前年同月比7.2%へ上昇し、市場予想の5.2%を上回った。3月の前年同月比4.1%から3ポイント超の急伸となる。上昇の背景には、食品と燃料(エネルギー)の幅広い価格上昇があり、インフレはコア指標にも広がりつつある(コアとは、天候などで価格が大きく変動しやすい生鮮食品やエネルギーを除き、基調的な物価の動きを示す指標)。
ブレント原油(北海産の代表的な原油で、国際指標価格の一つ)は第2四半期(2Q)に1バレル当たり約104米ドルで平均推移する見通し。供給途絶(産油地域の混乱などによる供給減)がはっきり緩和するのは第3四半期(3Q)になってからと見込まれる。CPIインフレ率はさらに上昇し、2Q平均で8%超となる見通しで、通年のインフレ予測は前年同月比6%に引き上げられる。
金融引き締め(利上げ)リスクが上昇
今回のデータは、フィリピン中央銀行(BSP:Bangko Sentral ng Pilipinas)による、より大幅かつ迅速な金融引き締め(政策金利の引き上げによって需要を抑え、物価上昇を抑制すること)のリスクを高める。6月に0.25%(25bp=0.25%ポイント)の利上げはほぼ確実とされ、0.50%(50bp)も選択肢となり得る。
直近の物価指標は強い警戒材料となった。4月のCPIは5.9%へ跳ね上がり、予想を上回って3月の3.8%から大きく加速した。上昇の主因は食品と輸送費(交通コスト)の再上昇で、背景には世界的な原油高がある。
これは過去にも見られた動きで、2025年にCPIが7%を超えたインフレ急騰を想起させる。当時BSPは、物価上昇を抑えるために積極的な引き締めを実施した。こうした過去対応は、今回も中央銀行がインフレ期待(企業や家計が将来の物価上昇をどの程度見込むか)を抑えるため、迅速に動く可能性を示す。
世界のエネルギー市場も圧力を強めている。ブレント原油は1バレル95ドル超で高止まりしており、主要産油地域での供給不安が続く限り、次の四半期に大きな値下がりは見込みにくい。こうしたコスト上昇は、国内の物価指標に直接波及し続ける。
市場のポジションとペソへの影響
この見通しの下では、短期金利上昇(近い将来の政策金利が上がること)を見込んだ取引が中心となる。6月のBSP会合は重要局面であり、0.25%の利上げは最低ライン。米ドルに対してペソが58.50を超える水準まで下落していることもあり、0.50%へ踏み込む方向にリスクが傾きやすい。
為替は複雑だ。一般に利上げは通貨(ペソ)を下支えしやすい一方、高インフレの長期化は投資家心理を悪化させうる。市場参加者は、ペソの変動(ボラティリティ=値動きの大きさ)拡大に備えたヘッジ(損失回避のための対策)を検討する必要がある。ペソは、中央銀行の引き締め姿勢と、悪化する物価指標という相反する材料の間で揺れやすい。