中東情勢の緊張再燃で原油価格が上昇し、アジア通貨は下落した。報道によると、イランがUAE(アラブ首長国連邦)に対してミサイルや無人機(ドローン)で攻撃したほか、ホルムズ海峡周辺でも事案が発生し、停戦(交戦を止める合意)の安定性に懸念が広がった。
原油高はエネルギー輸入コストを押し上げ、域内の物価上昇(インフレ)リスクを高める。加えて、米ドル高、米国債利回りの上昇(米国の長期金利の上昇)、リスク回避(安全資産を選好する動き)の強まりが重なり、アジアの為替相場の重しとなった。
原油ショックとアジア通貨への下押し圧力
フィリピン・ペソ(PHP)、インド・ルピー(INR)、タイ・バーツ(THB)は、原油価格の上昇の影響を受けやすいとされた。シンガポール・ドル(SGD)は相対的に底堅いとされたが、原油高と米ドル高の圧力は残る。
原油価格の急騰は、足元で最も重要な材料となっている。北海ブレント原油は今週、1バレル=98ドルを上回った。背景には、世界のエネルギー供給の要衝であるホルムズ海峡周辺での衝突再燃がある。ホルムズ海峡(ペルシャ湾と外洋をつなぐ狭い海域)は原油輸送の大動脈で、市場心理(投資家の不安や安心感)は悪化している。
エネルギー輸入への依存度が高いアジア経済にとって、原油高は逆風になりやすい。米ドル高とリスク回避が進み、域内のインフレ懸念も強まる。例えばインドの直近の消費者物価上昇率が4.8%である中、エネルギー価格の上振れは6%近辺へ再び押し上げ、中央銀行(金融政策を担う機関)の対応を迫る可能性がある。
取引の焦点とリスク管理
こうした環境では、原油価格に敏感なフィリピン・ペソ、インド・ルピー、タイ・バーツに注目すべきだ。米ドル/フィリピン・ペソ(USD/PHP)はすでに59.00水準(為替レートの節目)を試している。さらに、米ドル/インド・ルピー(USD/INR)のコール・オプション(将来、あらかじめ決めた価格で買う権利)を買うなど、通貨安で利益を狙う戦略が有望とみられる。原油価格が高止まりする限り、これら通貨は下押しされやすい。
一方、シンガポール・ドルは比較的底堅く、米ドル/シンガポール・ドル(USD/SGD)は1.355前後で推移している。堅調なファンダメンタルズ(経済の基礎条件)は、域内全体の弱さに対するヘッジ(損失を抑える手段)になり得る。
今回の急変は、2024年後半に見られた高い値動き(相場の荒れ)を想起させ、今後数週間は為替オプションのインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の変動率)が上昇しやすい。オプションの価格設定に注意し、通貨の大きな変動が続く局面に備えることが重要となる。市場環境は変化している。