NBCのストラテジストは、地政学リスクの高まり、エネルギー価格の高止まり、成長の弱さを背景に、ユーロの短期見通しは波乱含みになるとみている。これらの要因により、EUR/USD(ユーロ/米ドル)は「リスク回避(投資家が安全資産を選びやすい局面)」が強まる局面で、短期間の下落が起きやすいという。
また、欧州中央銀行(ECB)については「様子見(政策をすぐに変えない状態)」を続けていると説明する。ECBの政策決定機関である理事会は、インフレ率が想定以上に上振れするリスク(上振れリスク)と、景気が想定以上に悪化するリスク(下振れリスク)の両方が高いと指摘する一方、長期のインフレ期待(将来の物価上昇率に対する市場や家計の見通し)は安定しているという。
NBCは、情勢が落ち着き、ECBが「ハト派(利下げなど景気重視)」に傾くというより「慎重姿勢」を保つことを前提に、年末にかけてEUR/USDは小幅上昇すると予想する。ただし、以前よりもユーロの割安感による下支えは弱い。実質実効為替レート(物価の違いも織り込み、貿易相手国全体に対する通貨の強さを測る指標)が長期平均に近づいているためだ。
ユーロ相場は「2段階」の動きになる可能性がある。第1段階は、地政学リスクがエネルギー価格の高止まりを招き、投資家のリスク選好(リスク資産を買う意欲)を冷やすことで、短期的にユーロ安が進む局面。第2段階は、ショックが吸収され、年末にかけて小幅に持ち直す局面だ。
ユーロの先行きは波乱含みで、当面は地政学的緊張とエネルギー価格の高止まりが逆風になる。オランダTTF天然ガス先物(欧州のガス価格の代表的な指標)が先週、1メガワット時(MWh)当たり35ユーロを再び上回る水準へじり高となったことで、EUR/USDが短期的に弱含むリスクは高い。市場のリスク選好が低い局面では、特に押し目(下落局面)が起きやすい。
直近データも、綱渡りの状況を示す。2026年1~3月期のユーロ圏GDP(国内総生産、経済規模を示す基本指標)は前期比0.1%と低成長にとどまった一方、4月のインフレ率は2.5%と下がりにくい。ECBは、景気の弱さに強く対応すればインフレを再燃させやすく、かといって物価だけを抑え込もうとすれば景気をさらに冷やしかねない。結果として、ECBは当面忍耐強く政策を動かしにくく、ユーロの下値は支えやすいが、上値余地も限られやすい。
ユーロはもはや「割安だから上がる」局面ではない。実質実効為替レートが長期平均近辺で推移しており、ここからの上昇は平均への回帰(行き過ぎが元に戻る動き)ではなく、景気や物価など基礎条件の改善が必要になる。急騰より、じり高の展開が想定される。
2025年の大きな値動きも、エネルギー価格不安でユーロが下落し、その後、市場がショックを織り込むにつれて持ち直すという流れだった。これを踏まえると、今後数週間で1.0700割れ(1ユーロ=1.07ドルを下回る水準)もあり得るが、中長期の投資家には買い場になる可能性がある。この過去の動きは、年内の「2段階」シナリオと整合的だ。
今後数週間の戦略としては、下落リスクに備えるヘッジ(価格変動の損失を抑える手当て)や、アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)のコールオプション(将来、決めた価格で買う権利。OTMは今すぐ行使しても得にならない水準)を、2026年6~7月満期で売る選択肢がある。オプション・プレミアム(オプションの受け取り/支払い代金)を得ながら、景気と物価が相反するシグナルを出しておりレンジ相場(一定の範囲で上下しやすい相場)になりやすい点を織り込む狙いだ。横ばい、または小幅安に備えつつ、その後の回復に対応する。
年後半は、環境が安定すれば、1.1000~1.1200方向への小幅な上昇を見込む。これに備えるには、2026年12月満期のブル・コール・スプレッド(コールを買い、より高い行使価格のコールを売る戦略。上昇の利益は限定されるがコストも抑えやすい)など、リスクを限定した長期のポジションが候補となる。想定以上に短期リスクが長引いた場合でも損失を抑えつつ、緩やかな上昇に乗る狙いである。