インド・ルピーはイラン情勢の緊張が高まった局面に入る前から、海外への資金流出(外国人投資家が資金を引き揚げる動き)が強く、通貨としての弱さを抱えていた。ベトナムのドンも資金流出が指摘されるが、規模はより小さいとされる。
ロイターによると、インド準備銀行(RBI、中央銀行)は米ドル建て資金の流入を増やすための対応を検討している。選択肢としては、2013年に実施されたFCNRスワップ制度(海外在住インド人の外貨預金を呼び込み、銀行がRBIと通貨交換する仕組み)に近い制度や、海外投資家が保有するインド国債にかかる源泉税(利子などから差し引かれる税)を撤廃する案が挙げられた。
MUFGは、今後12カ月のUSD/INR(米ドル/インド・ルピー)の取引レンジを95.00〜96.00と予想している。これはその期間にルピーが米ドルに対して弱く推移しやすいことを意味する。
2025年を振り返ると、地政学リスクが強まる前からインドでは大きな資金流出が続き、ルピー相場は不安定だった。この基調的な弱さから、ルピーは米ドルに対して弱含みが続き、USD/INRは今後1年で95.00〜96.00に近づくとの見方が支えられる。
一方で、RBIが米ドル資金の流入を促す施策を発表するかどうかは注視が必要だ。報道では、海外在住インド人向けの特別な預金制度や減税を検討している可能性がある。2013年に通貨安定に寄与したFCNRスワップと同様の枠組みが導入されれば、市場は急変しやすく、USD/INRのオプション取引で示される予想変動率(市場が織り込む将来の値動きの大きさ)が注目点になり得る。
直近のデータも圧力を裏づける。2026年4月だけで、外国人ポートフォリオ投資家(株式・債券などの金融商品に投資する海外投資家)がインド株式市場から約40億ドルを引き揚げたとされる。USD/INRのスポット(現物)レートは93.50近辺で推移し、予想レンジに向かう動きを示している。インドの外貨準備は約6400億ドルへ小幅に低下しており、RBIが現物市場で通貨防衛の取引を行っている可能性も示唆される。資金流出が続くなら、ルピー安方向の見方は強まりやすい。
デリバティブ(金融派生商品)取引の観点では、短期的にUSD/INRの上昇を想定したポジションが論点となる。USD/INRのコールオプション(将来、あらかじめ決めた価格で買う権利)を買うことは、ルピー安(=USD/INR上昇)から利益を狙う直接的な方法だ。RBIの対応で短期の値動きが大きくなる可能性があるため、ブル・コール・スプレッド(安い権利行使価格のコールを買い、高い権利行使価格のコールを売ってコストを抑える手法)も検討余地がある。