スイスの消費者物価指数(CPI、消費者が購入する品目の価格の動きを示す指標)は4月、前年同月比0.6%上昇した。前回の0.3%から伸びが拡大した。
今回の結果から、前年同月比の物価上昇率は0.3ポイント拡大したことになる。これは4月の物価を1年前の同じ月と比較したものだ。
インフレ率が0.6%へ上昇したことで、当面の見通しは変化した。依然として水準は低いものの、スイス国立銀行(SNB、スイスの中央銀行)が6月会合で追加利下げ(政策金利を引き下げること)に踏み切る可能性は大きく低下した。SNBは2025年に利下げを先行したが、今回のデータは、今は様子見(利下げ停止)に転じる可能性が高いことを示す。
為替のデリバティブ(元となる資産の値動きに連動する金融商品)では、スイスフラン高に焦点が移る。現在0.97前後のユーロ/スイスフラン(EUR/CHF、ユーロとスイスフランの交換比率)は低下方向を想定したポジションを検討したい。具体的には、EUR/CHFのプット・オプション(一定の価格で売る権利)や、スイスフランのコール・オプション(一定の価格で買う権利)を買うことで、SNBが欧州中央銀行(ECB、ユーロ圏の中央銀行)より金融引き締め寄り(タカ派:利下げに消極的、または利上げ寄り)に傾く見方を直接表現できる。
金利市場では、スイスの短期金利先物(将来の短期金利の水準を取引する商品)が売られる(価格が下がる)と見込む。市場が近い将来の利下げ確率を織り込まなくなるためだ。金利スワップ市場(固定金利と変動金利を交換する取引で、将来の金利見通しが反映されやすい)を見ると、6月利下げの示唆確率は先月の70%超から足元では50%未満に低下している。この見直しは、参加者がポジションを調整するなかで続く可能性がある。
この環境はスイス株にも逆風となり、下落に備える戦略が選好されやすい。スイスフラン高は輸出企業の採算を悪化させやすく、借入コスト低下(資金調達が安くなること)への期待が後退することも、スイス株価指数(SMI、スイス主要株の指数)の重荷となり得る。今後数週間のヘッジ(損失を抑えるための保険的取引)として、SMIのプット・オプションを買うことがコスト面で有効な選択肢となる。