銀(XAG/USD)は火曜のアジア時間に約72.85ドルまで下落し、100日指数平滑移動平均線(EMA、直近の価格に比重を置いて平均値を出す移動平均)を下回って推移、売り圧力が続いた。ホルムズ海峡でイランが船舶を攻撃したとの報道を受けて原油価格が上昇し、インフレ(物価の上昇)懸念が強まった。
インフレ懸念の高まりにより、米連邦準備制度理事会(FRB)が高金利をより長く維持するとの見方が拡大した。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は日曜、エネルギー要因によるインフレリスクがなお高いとして、追加利上げの可能性を排除できないと述べた。
テクニカル面は弱い
日足では、価格は100日EMAとボリンジャーバンドの20日単純移動平均(SMA、一定期間の平均値)を下回っている。14日RSI(相対力指数、買われ過ぎ・売られ過ぎを示す指標)は44前後で、売りが優勢だが売られ過ぎ水準ではない。
上値抵抗は100日EMAの74.45ドル近辺、その上はボリンジャーバンドの中心線(20日SMA)である76.00ドル前後、さらに上は上限バンドの80.85ドル付近。下値支持は5月4日安値の72.20ドルで、割り込むと下限バンドの71.15ドル近辺が意識される。
銀価格は、地政学リスク、景気後退(リセッション)懸念、金利、米ドルの動きの影響を受けやすい。また、電子部品や太陽光発電向けなどの工業需要、金(ゴールド)価格との連動、金銀比率(ゴールド価格をシルバー価格で割った比率)も価格を左右する要因となる。
2025年の同時期には、銀は73ドルを下回る水準で推移し、強い下押し圧力がかかっていた。中東情勢の緊張が原油高を招き、FRBが高金利を続けるとの警戒が背景にあった。こうした見方に加え、価格が100日移動平均線を下回ったことで、弱気の見方が強まった。
2025年の下押しから2026年の複雑化へ
2025年後半にインフレが落ち着くにつれて高金利長期化への不安は後退し、貴金属は大きく上昇した。銀は75ドルを下回る水準から急反発し、FRBの政策転換(利下げ方向への変更)を見込んでいた投資家に追い風となった。太陽光パネルや電気自動車(EV)向けを中心とする工業需要も、2026年1〜3月期にかけて下支え要因となった。
足元で銀が約85.10ドルで推移する中、環境はより複雑になり、対応も変える必要がある。2026年4月の米消費者物価指数(CPI、物価の代表的な統計)は前年比2.9%とやや強めで、早期利下げ期待が後退し、不透明感が増した。これを受け、銀オプションのインプライド・ボラティリティ(将来の値動きの大きさの市場予想)が3カ月ぶり高水準となり、オプション料(プレミアム)が上昇している。
工業需要は引き続き下支え材料で、シルバー・インスティテュートの最新報告では2026年1〜3月期の太陽光(PV)需要が前年同期比14%増となった。一方、COT(Commitment of Traders、米先物市場で投機筋などの建玉状況を示す統計)では、大口投機筋の買い持ち(ネットロング、買い建てが売り建てを上回る状態)は高水準でも、新規の買い増しがこの2週間停滞している。上昇の勢いが鈍っている可能性がある。
この状況では、直近の利益を守る、または持ち合い(一定の値幅での横ばい)を想定した戦略が選択肢となる。権利行使価格(ストライク)82.00ドル前後のプット(売る権利)の購入は、急落に備えて買い持ちの損失を抑える手段になり得る。上昇が一時的な休止だと見る場合、保有分に対してカバードコール(現物や買い持ちに対しコールを売ってプレミアム収入を得る手法)を行えば、上昇したプレミアムを収益化できる。
金銀比率は、昨年の85:1超から足元78:1へ低下しており、銀が金を上回っていたことを示すが、いまは安定し始めている。80:1を再び上回る動きは、資金が相対的に安全とされる金へ向かう兆しになり得る。FRBの方向性が明確になるまで、損失上限を限定できるオプション・スプレッド(例:ベア・プット・スプレッド=プットを買い、より低いストライクのプットを売ってコストを抑える弱気戦略)を用いた慎重な対応が考えられる。