WTI原油は月曜、中東の紛争激化を受けて3%超上昇した。日中安値の1バレル=96.45ドルから上げ幅を広げ、102.55ドルで取引された。
UAE当局は、イランの無人機(ドローン)攻撃を受け、フジャイラの石油関連施設で火災が発生したと発表した。UAE国防省によると、ミサイル3発を迎撃し、4発目は海上に落下した。
市場は高まる地域リスクに反応
ドバイのCNN関係者は、今後24時間以内に米国とイスラエルがイランを攻撃する可能性があるとみている。米海軍高官は、イランが巡航ミサイルで商船および米軍艦船を攻撃したと述べた。巡航ミサイル(長距離を低空で飛行し目標を攻撃する誘導ミサイル)の攻撃に関連し、商船航行の妨害を図ったイランの小型ボート6隻を破壊したという。
イラン国営メディアは米艦が被弾したと報じた。一方、Axiosは米政府高官の話として、攻撃は起きていないと伝えた。イラン革命防衛隊海軍はホルムズ海峡近辺の支配区域を拡大したとする地図を公表し、フジャイラやホールファッカン、ウム・アル=クワイン沿岸を含めた。革命防衛隊(イランの軍組織の一つで、対外作戦や海上警備を担う部隊)による発表は、海上輸送への圧力強化を示唆する。
ドナルド・トランプ大統領は、ホルムズ海峡の商船航行を守るため「オペレーション・フリーダム」を発表した。韓国は船舶で火災と爆発があったと報告。UAEは、海峡内でADNOC(アブダビ国営石油会社)の船舶がドローン攻撃を受けたとしてイランを非難した。
UAEはOPEC(石油輸出国機構)から脱退し、生産枠の制限なしに増産すると表明した。米国の3月の製造業受注(工場受注)は前月比1.5%増となり、市場予想の0.5%増、2月の0.3%増を上回った。
テクニカル面では、WTIは上向きの傾向が示された。RSI(相場の買われ過ぎ・売られ過ぎをみる指標)が50を上回り、「強気の包み足(ブルリッシュ・エンガルフィング)」が確認された。これは、前日の下落分を当日の上昇で包み込む形で、上昇に転じやすいとされるローソク足の形。上値の目安は103.86ドル、104.00ドル、107.35ドル、108.00ドル。下値は100.00ドル、次に50日単純移動平均線(過去50日平均の価格を示す線)89.65ドルが挙げられた。
現在の環境と主要な材料
昨年、中東情勢の緊張によりWTI原油が1バレル=102ドル超へ急伸した局面があった。イランによるUAE攻撃と、その後の米海軍によるホルムズ海峡での作戦が重なり、市場に地政学リスクによる上乗せ分(リスク・プレミアム)が生じた。さらにUAEのOPEC離脱は、世界の供給調整が効きにくくなるとの見方を広げた。
本日(2026年5月5日)時点でWTIは95ドル近辺で推移し、供給不安がいったん和らいだことを映している。ただし先週の米エネルギー情報局(EIA:米政府のエネルギー統計機関)統計では、米原油在庫が210万バレル増と、市場が想定していた減少(取り崩し)に反して増加した。在庫増は短期の需要が弱い可能性を示し、地政学リスクによる下支えと相反する材料になる。
ホルムズ海峡は昨年の「オペレーション・フリーダム」の中心で、依然として緊張の火種となっている。海上輸送の保険料は2025年以前より高い水準にある。直接の軍事衝突は落ち着いたものの、イランが昨年宣言した支配区域の拡大により、地域の不測の事態が起きれば、主要な海上輸送の要所(チョークポイント)に再び影響が及び得る。この「潜在的なリスク」は価格の下値を支えやすい。
供給面では、UAEはOPEC離脱後に日量約40万バレル増産し、世界市場への供給が増えている。一方、OPEC+(OPECとロシアなど協調する産油国の枠組み)は先月の会合で、第3四半期まで減産の維持を決め、価格下支えを狙った。減産を守る国と独自増産する国の綱引きが、相場の変動要因になっている。
米国のマクロ指標では、インフレ率が3.1%と高止まりし、雇用統計も強めだった。これを受け米ドル指数(主要通貨に対するドルの強さを示す指数)は6カ月高値となった。ドル高は、他の通貨で見る原油価格を割高にし、需要の重荷になり得る。金融面の圧力と中東の供給リスクが拮抗している。
この環境では、オプション(将来の売買をあらかじめ決めた価格で行う権利)を使い、価格変動を前提にした戦略が有効になり得る。長期のコール(買う権利)やコール・スプレッド(コールの買いと売りを組み合わせる手法)なら、中東情勢再燃で価格が急騰した場合に備えつつ、下落時の損失を限定できる。逆に景気減速などの悪材料が優勢になるとみる場合、プット(売る権利)で下落への備えや下落局面の収益機会を狙える。
テクニカル面では、50日移動平均線の91.50ドル付近が下値支持、心理的節目の100ドルが上値抵抗として意識される。「強気の包み足」は、地政学ニュースで投資家心理が急変し得ることを示す例として参考になる。レンジを明確に上抜けるか下抜けるかが、次の大きな方向性の手掛かりとなる。