EUR/USDは金曜日、米国とイランを巡る戦況の進展で米ドルが弱含み、ユーロが支えられたことで上昇した。取引水準は1.1768近辺と、1週間超ぶりの高値圏に近づいた。
報道によると、米国が「核協議を先送りする内容だった」従来案を拒否した後、イランはパキスタンの仲介を通じて新たな提案を送ったという。新提案の詳細は明らかにされていない。イラン国営IRNAは、アッバース・アラグチ外相が周辺国の関係者に対し、戦争終結に向けたイランの立場を説明したと伝えた。
地政学リスクとEUR/USDの値動き
原油価格は直近高値から小幅に反落し、米ドルは2週間ぶりの安値圏へ下落した。ドルの動きには、日本当局が円安の進行を抑える目的で為替市場に介入した可能性(当局による外貨売買)があることも影響した。
米ドル指数(DXY、主要通貨に対する米ドルの総合的な強さを示す指数)は97.88近辺で推移し、前日比約0.22%安となった。米経済指標は強弱まちまちで、ISM製造業PMI(購買担当者の景況感指数。50超で拡大、50未満で縮小)は4月に52.7と市場予想の53.0を下回った。一方、S&Pグローバル製造業PMI(同じく景況感指数)は54.0から54.5へ上方修正され、3月の52.3から上昇した。
米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)の政策金利決定は今週、ともに据え置きだった。FRB関係者は次の手が利下げにも利上げにもなり得るとし、インフレの再燃(物価上昇の衝撃)が起きれば、2%目標を守るために複数回の利上げが必要になる可能性があると警告した。
インプライド・ボラティリティとオプションのポジション
ECB関係者は、利上げの可能性が高まりつつあると述べた一方、短期的なGDP(国内総生産)への逆風や、インフレ上振れリスクの増大にも言及した。
現状は不確実性が大きく、EUR/USDは地政学ニュースで1.1768まで上昇した。これは、米・イランの和平協議への期待(金融引き締めに慎重=ハト派的と受け止められやすい要素)と、FRB・ECB双方の引き締め継続を示唆する警告(利上げに前向き=タカ派)の綱引きが続く構図だ。デリバティブ(先物・オプションなどの派生商品)取引では、今後数週間の主題はボラティリティ(価格変動の大きさ)になりやすい。
2024~2025年にはインフレが根強く、米CPI(消費者物価指数)が3%をなかなか下回らず、ユーロ圏の物価上昇も懸念材料だった。こうした経緯は、FRB・ECB関係者の警告に説得力を与え、金利見通しが急に変わり得ることを示す。このため、満期が長いオプション(長期オプション、Long-dated options)の価格は、今後のインフレ指標に特に敏感になりやすい。
米ドル安はイラン要因だけではない。日本の介入観測は重要な要因で、DXYを97.88へ押し下げた。2024年に日本当局が大規模介入を行った局面では、ドルストレート(米ドルが絡む通貨ペア)で急激かつ突発的な値動きが起きたことを思い起こす必要がある。このため、米ドルを売るポジションは、政策対応で価格が飛ぶ「ギャップリスク(急変で不利な価格に飛ぶリスク)」を抱えやすい。
先物だけで単純に方向性を当てにいく環境ではない。相反する材料が並ぶため、オプションでボラティリティを買う戦略、例えばストラドル(同じ権利行使価格のコールとプットを同時に買う)やストラングル(異なる権利行使価格のコールとプットを同時に買う)の方が慎重な選択になり得る。これらは上下どちらかに大きく動けば利益になりやすく、地政学と中銀政策の膠着(行き詰まり)を考えると大きな値動きは起こり得る。
EUR/USDの1.1768という水準を見ると、2025年の大半で中心となった1.05~1.12のレンジ(一定範囲の往来)を大きく上回っている。1.1800を明確に上抜けて定着すれば、新たな買いを呼びやすく、短期のコールオプション(上昇に備える権利)が魅力的になり得る。一方で、和平協議が崩れれば1.1500方向へ急落する可能性もあり、プット(下落に備える権利)による保険が奏功しやすい。