ダラス連邦準備銀行(地区連銀の一つ)総裁のローリー・ローガン氏は、FRB(米連邦準備制度理事会)が「現時点で金融政策を緩和する(利下げ方向に寄せる)かのような」ガイダンス(先行きの示唆)を出すべきではないと述べた。次の利上げ・利下げの判断は、利下げにも利上げにもなり得るという。
同氏は、景気見通しの不確実性が非常に大きいと指摘した一方、雇用市場は安定しているとも述べた。
インフレリスクはなお高い
同氏は、インフレ率を2%へ戻すこと(FRBが目標とする物価上昇率)について懸念が強まっているとした。インフレの道筋は不透明だという。
同氏はFOMC(連邦公開市場委員会:金融政策を決める会合)で、緩和方向の姿勢に反対した。状況は安定しているとの見方も繰り返した。
「次のFRBの一手は必ず利下げ」といった見方は後退している。今後数カ月は不確実性が高く、利上げと利下げの両方が起こり得る局面に入った。市場の変動(価格の振れ)が大きくなる可能性がある。
背景には、インフレの粘着性(下がりにくさ)がある。2026年4月のCPI(消費者物価指数:家計が買うモノやサービスの値上がりを示す指標)は前年同月比3.6%へ加速し、市場予想を上回った。年初に見られた鈍化傾向を打ち消す内容で、FRBは2%目標の達成が難しくなることを警戒している。
市場の変動は拡大する可能性
トレーダーはボラティリティ(価格変動の大きさ)上昇への備えを検討する必要がある。オプション(将来の売買価格をあらかじめ決める権利)の価格は上がりやすい。VIX指数(米株の不安心理を示す指標)は、この1週間で14を下回る水準から17超へ上昇しており、ヘッジ(損失を抑える保険)のコストが上がっていることを示す。
金利先物市場では、2026年末までに少なくとも2回の利下げを織り込んできたが、現時点では楽観的に見える。こうした見通しに対しては、SOFR先物(政策金利に近い短期金利の指標SOFRをもとにした先物)など、調整が遅れている短期物を使い、過度な利下げ期待の修正(織り込みの見直し)に備える余地がある。
2025年も、インフレが下がり切らず、相場が「大幅利下げ」を何度も織り込んでは外れた経緯がある。緩和だけを示すガイダンスには慎重であるべきで、インフレの先行きは依然として不透明だ。
雇用市場の底堅さは、FRBがタカ派(引き締め寄り)の姿勢を維持する余地を与える。4月の雇用統計は雇用者数が25万人増、失業率は3.8%で横ばいとなり、景気下支えのために急いで利下げする必要性は高くない。FRBはインフレ抑制に集中しやすい。
不確実性が高い局面では、相場の方向を一つに決め打ちする取引はリスクが大きい。オプションでストラドル(同じ権利行使価格のコールとプットを同時に買う)やストラングル(異なる権利行使価格のコールとプットを買う)を主要株価指数で組むことで、上下どちらかに大きく動く局面を狙う手法が考えられる。これは、最終的な方向を当てるのではなく、変動拡大そのものを取引する戦略だ。