欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのマディス・ミュラー氏は、ECBが政策金利(中央銀行が調整する基準となる金利)を引き上げる必要が高まりつつあると述べた。発言は金曜日。
ミュラー氏はまた、エネルギー価格が高止まりする見通しがより明確になってきたとも語った。利上げの時期や幅(何%引き上げるか)には言及しなかった。
利上げ観測の強まり
発言後、EUR/USDは1.1735近辺で推移し、前日比0.03%高となった(執筆時点)。
利上げをめぐる議論が再び強まり、市場はこれを重く受け止めている。ユーロ圏の2026年4月のインフレ率(物価上昇率)が2.9%となったことで、こうしたタカ派(金融引き締めに積極的な姿勢)の発言は単なる見通しにとどまらない。注目点は、金利見通しとEUR/USDへの影響である。
デリバティブ(金融派生商品)市場では、投資家がポジション調整を進め、夏の終わり頃までにECBが利上げに踏み切る確率が高まったとの織り込みが進んでいる。ユリボー(Euribor:ユーロ圏の銀行間取引の基準金利)先物カーブはスティープ化(長めの期間ほど金利が高い形に傾くこと)しており、借入コスト(資金調達金利)が想定より早く上がるとの見方を示す。これは2022〜2023年の急速な利上げ局面で見られた動きと同じだ。
市場への影響とヘッジ
為替市場では、この見通しはユーロを支えやすい。EUR/USDオプションのインプライド・ボラティリティ(市場が見込む将来の値動きの大きさ)は上昇しており、大きな変動への備えが進んでいることを示す。戦略としては、ユーロのコールオプション(将来、あらかじめ決めた価格で買う権利)を買い、1.1000方向への上昇に備える方法が考えられる。
一方で、この金融政策の転換は欧州株にとってリスクになり得る。金利上昇は企業の借入コストを押し上げるためだ。VSTOXX指数(欧州株の予想変動率を示す指標)はすでに18を上回り、不確実性の高まりを映している。株式ポートフォリオ(保有資産の組み合わせ)のヘッジ(損失を抑えるための対策)として、VSTOXX先物や主要指数のプットオプション(将来、あらかじめ決めた価格で売る権利)の購入が選択肢となる。
インフレ懸念の主因はエネルギー価格の高止まりだ。欧州の天然ガス価格は年初来で30%超上昇しており、2025年に直面した供給制約の再来を意識させる。こうした環境では、中央銀行がインフレを見過ごしにくくなり、利上げの可能性が高まる。