クリスティーヌ・ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は、4月の金融政策会合で主要政策金利を据え置いたと述べた。決定内容と経済見通しについて、記者団の質問に答えた。
同氏は、仮に紛争が明日終結しても、エネルギーへの影響はなお続くとの見方を示した。エネルギー市場に連動した物価への影響が続いている点に言及した。
エネルギー起因のインフレが引き続き主因
ラガルド総裁は、いわゆる「二次波及効果」(エネルギー高など最初の物価上昇が、賃上げや他の価格引き上げを通じて広く物価全体に波及し、インフレが自己増殖すること)が現時点では見られないと述べた。企業への電話調査(企業に聞き取りして賃金や価格の動向を把握する調査)でも、大幅な賃上げは示唆されていないという。
足元では、エネルギー価格の上昇が長引くことが最大の懸念となっている。北海ブレント原油(欧州で指標となる原油価格)が1バレル=95ドル前後で底堅く推移していることを踏まえると、ユーロ圏のHICP(調和消費者物価指数:欧州各国の物価指標を共通基準でまとめたインフレ率)が2.8%から下がりにくいのも当然だ。インフレ目標である2%への早期回帰を見込むのは時期尚早といえる。
一方で、「賃金・物価スパイラル」(賃上げ→企業の値上げ→さらに賃上げ、という悪循環)の懸念は当面後退している。2026年1~3月(Q1)の「交渉賃金」(労使交渉で決まる賃金上昇率)は4.1%に鈍化した。これは、二次波及効果が大きくなっていないという見方を支える材料で、ECBが追加の大幅利上げを急がず、金利を据え置く判断を取りやすくする。
この結果、インフレは高止まりしつつも、今回の局面での「最終到達金利(ターミナルレート:利上げが止まる水準)」はすでにほぼ決まった可能性が高い。市場参加者の間では、EURIBOR先物(ユーロ圏の短期金利指標EURIBORをもとにした先物取引)など短期金利商品の値動きが落ち着くことを見込み、「ボラティリティ(価格変動の大きさ)」が下がる局面を狙う戦略が意識されやすい。金利が大きく上下するより、一定のレンジで推移することで利益を狙う発想だ。
長期据え置きを見据えたポジション
2025年にピークを迎えた急速な利上げ局面は、当時の広範なインフレを抑え込むためのものだった。これに対し現在の課題はより限定的で、主にエネルギーに集中している。政策対応は以前ほど機敏になりにくいとみられ、夏場にかけての追加利上げを市場が織り込む動きに慎重な姿勢を後押しする。
エネルギー価格の影響が長引くとの見立てが強い以上、エネルギーへの直接的な関与が主要テーマとなる。原油や欧州天然ガス先物のコールオプション(あらかじめ決めた価格で将来買う権利。価格上昇で利益が出やすい)は、今後数カ月の価格上振れに備える手段となる。これは、地政学リスクによる「リスク・プレミアム」(不確実性の上乗せ分)が短期では消えにくい、という見方と整合的だ。