ブレント原油は、イランを巡る緊張と米国の海上封鎖を背景に、1バレル当たり124〜126米ドル付近まで上昇し、供給途絶への懸念を強めた。6月限のブレントは124米ドルに達し、その後は126米ドル近辺で取引され、3月9日に付けた直近高値(119.5米ドル)を上回った。
イランとの協議停滞を受け、米国が軍事攻撃を検討しているとの報道が、原油に上乗せされる地政学リスク分(有事の上乗せ分)を押し上げた。予測市場のPolymarketでは、ホルムズ海峡の通航が5月末までに通常状態へ戻る確率は30%未満と示されており、市場は混乱の長期化を織り込んでいる。
イラン情勢と原油市場のリスク
Polymarketは、米国が海上封鎖を解除する確率を45%と見積もっている。エネルギー価格の上昇は物価上昇(インフレ)を押し上げ、株式や外国為替など幅広い市場の値動きにも影響している。
昨年(2025年春)、米国とイランの対立でブレント原油が1バレル126米ドルまで上昇した局面は、市場心理に強い記憶として残っている。ホルムズ海峡での海上封鎖を伴う極度の緊張が作った地政学リスク分は、完全には消えていない。
当時、CBOE原油ボラティリティ指数(OVX、原油の値動きの大きさに対する市場の見方を示す指標)が60を上回った急騰を踏まえ、足元でも警戒感は根強い。現在のOVXは35近辺で、当時より落ち着いているが、中東情勢のニュースに対しては依然として反応しやすい状態だ。潜在的な緊張が続く以上、新たな供給障害が起きれば、価格が一気に上に跳ねる(急騰する)可能性がある。
上昇への備えとしてのオプション活用
足元のブレントは1バレル88米ドル近辺で推移し、2025年の高値からは大きく低いものの、OPEC+(OPECと非加盟の主要産油国による枠組み)が供給を管理し、在庫が引き締まっていることが下支えしている。米エネルギー情報局(EIA)の最新データでは、商業用原油在庫は5年平均をなお3%下回る。供給の余裕が小さいため、混乱が起きた場合の価格への影響が大きくなりやすい。
この環境では、想定外の上昇に備える手段として、ブレントやWTI(米国産の代表的な原油)の長期のコールオプション(将来、決められた価格で買う権利)を買い、急な緊張激化に備える戦略が選択肢となる。コールスプレッド(高い行使価格のコールを売り、買いコストを抑える組み合わせ)を使えば、支払う保険料(オプション料)を抑えつつ、急騰時の利益機会を狙える。
2025年のエネルギーショック後、主要国でコアインフレ(食品・エネルギーを除いた物価上昇率)が3.5%を上回って高止まりするなど、物価の押し上げ圧力が続いていることも背景にある。中央銀行は景気刺激(利下げなど)に動きにくく、需要が弱くなる可能性があるため、先物の買い持ち(価格が上がる前提の投資)はリスクが大きい。そのため、損失を限定しやすいオプションでリスクを管理する方法が、今後数週間の局面では比較的慎重な対応となる。