市場の織り込みでは、英中銀(BoE)が年末までに約80bp(ベーシスポイント=金利0.01%の単位)利上げする見方となっており、欧州中央銀行(ECB)の織り込みに近い。ECBの政策金利はBoEより150bp低い水準から始まる。
BoEの決定は将来の金利見通しを弱め(利上げ期待の後退)、EUR/GBP(ユーロ/英ポンド)を下支えする可能性がある。採決は「据え置き」賛成が8、「利上げ」賛成が1の8-1と見込まれ、チーフ・エコノミストのヒュー・ピル氏が利上げ票を投じる想定だ。
Bank Policy Expectations
BoEから、今後の政策運営に関する新たなガイダンス(先行きの説明)は出にくい見通し。代替シナリオとしては、メーガン・グリーン委員、キャサリン・マン委員も利上げ票を投じる、またはアンドリュー・ベイリー総裁が市場の強い利上げ織り込みをけん制する可能性がある。
英国政治もポンドの材料となっている。労働党のマンチェスター市長アンディ・バーナム氏の発言とされる内容が、英国債(ギルト=英国政府が発行する国債)とポンドの動きに結び付けて語られている。発言には、防衛費を財政ルール(財政運営の制約)から除外する可能性への言及が含まれていた。
EUR/GBPには、政権の安定性への懸念や労働党の成績不振の可能性に関連した上振れリスクがあるとされ、短期的に0.8700超えが意識されている。
市場はBoEの利上げを織り込み過ぎており、ECBとほぼ同水準まで引き上げ観測が近づいているとの見方がある。BoEの政策金利は4.25%で、ECBの3.00%を大きく上回るため、この織り込みは行き過ぎだとされる。きょうの会合後に市場の見通しが下方修正される可能性が高いという。
Political Risk And Sterling
英国側で「ハト派」方向への見直し(利上げ期待の後退)が起き得る一方、ECBはより強い姿勢を維持する可能性がある。直近データでも差が見られ、英国のインフレ率は先月2.8%へ鈍化したのに対し、ユーロ圏は3.2%と高止まりしている。この違いは、EUR/GBPが上昇しやすい環境を示す。
デリバティブ(金融派生商品)取引を行う投資家にとっては、ポンドに対してユーロ高方向を想定したポジションが示唆される。例えば、権利行使価格(ストライク)0.8700近辺のEUR/GBPコールオプション(上昇時に利益を狙う権利)を買う戦略が、今後数週間で有効になり得る。上昇局面の利益を狙いつつ、損失を限定しやすい。
見通しを補強しているのが、英国で高まる政治的不確実性だ。労働党政権の安定性を疑問視する見方が増え、先週のYouGov世論調査では、野党に対する労働党のリードが5ポイントに縮小した。政治不安は通貨の下押し要因になりやすい。
2022年の「ミニ予算」危機でギルトとポンドが急落したように、市場が英国の財政政策に敏感であることは確認されている。財政ルールから特定支出を除外するとの趣旨の発言は、債券市場の警戒を再び強めている。財政規律が緩む兆候は、ポンドに大きな下押し圧力となり得る。
BoEのハト派方向への見直しと政治リスクの上昇が重なることで、EUR/GBPは短期的に0.8700を上回る動きが想定される。足元の環境は、通貨ペアの上振れリスクが明確だ。