USD/INRは木曜の寄り付きで、ルピー安により95.35近辺の過去最高値まで上昇した。背景には、原油高と、米連邦準備制度理事会(FRB)の決定後に米ドルが強含んだことがある。WTI(米国産原油の指標)は約107.00ドルと1%近く上昇し、7週間超で最高水準となった。
米国は、ドナルド・トランプ大統領がホルムズ海峡の再開に関連する提案を拒否した後、イランの港に影響する海上封鎖(艦艇による航行制限)を継続した。同海峡は世界のエネルギー供給の約20%が通過し、混乱は原油供給への不安を強め、原油価格の押し上げ要因となっている。
ドル高とFRBのシグナル
米ドルは3営業日続伸した。FRBのジェローム・パウエル議長は、金融緩和に前向きな姿勢(利下げ方向の姿勢)から距離を置くべきだとする当局者が増えていると述べた。ドル指数(DXY=主要通貨に対するドルの強さを示す指数)は99.10近辺へ小幅上昇した。
FRBは政策金利を3.50%~3.75%で据え置き、8対4で決定した。1人が利下げを主張して反対し、3人は「金融緩和に前向きな姿勢」の文言を盛り込むことに反対した。パウエル議長は、リスクと中東情勢に伴う不確実性に言及した。
海外機関投資家(FII=海外の大口投資家)はインド株を8営業日連続で売り越し、売越額は2万2863.50ルピーとなった。テクニカル面では、20期間EMA(指数平滑移動平均=直近の価格をより重視する移動平均)が93.83、RSI(相対力指数=買われ過ぎ・売られ過ぎを測る指標)が67近辺、96.00方向への上昇余地が意識されている。
USDINRの見通し
2026年1-3月の追加利上げを受け、FRBの政策姿勢はさらに引き締め寄りとなり、政策金利の中心値は4.00%~4.25%のレンジにある。市場の織り込み(フェッドファンド先物=将来の政策金利見通しを反映しやすい先物)では、年末までの利下げ確率は20%未満にとどまる。政策の引き締めが長引くほど米ドルへの資金流入が続きやすく、ルピーには逆風となる。
原油価格は、2025年のイラン封鎖のピーク時にみられた107ドル超からは低下したが、WTIは1バレル95ドル前後の高止まりが続く。世界的な供給の余裕の乏しさと底堅い需要により、エネルギーコストはインドの外貨準備(対外支払いに備える外貨の蓄え)を圧迫しやすい。世界有数の原油輸入国であるインドでは貿易収支が悪化しやすく、通貨の重しとなる。
このため、上昇局面への参加と下落リスクの限定を両立する手段として、USD/INRのコールオプション(将来、あらかじめ決めた価格で買う権利)の購入を検討する余地がある。インプライド・ボラティリティ(市場が見込む将来の値動きの大きさ)は高水準で推移しており、不確実性が強い状況を示す。コール・スプレッド(コールの買いと売りを組み合わせ、最初のコストを抑える戦略)により、支払いプレミアム(オプションの代金)を圧縮する選択肢もある。これにより、98.00~99.00レンジへの上昇局面を狙いやすくなる。
テクニカル面でも強気見通しを補強する。昨年の上値目標とされた96.00は、現在では下値の支え(サポート)になっている。先物(将来の売買価格を決める取引)で買いポジションを構築し、直近高値の上抜けが続く展開を想定する手もある。急反落に備え、96.00を下回る水準に損切り(損失拡大を防ぐための決済)を置くのがリスク管理として妥当だ。