EUR/GBPは、イングランド銀行(BoE)と欧州中央銀行(ECB)の政策金利差(将来の金利見通しを市場価格から逆算したもの)で説明される水準を上回って推移している。これは、英国の政治不透明感と、エネルギー価格急騰(エネルギーショック)後の英国国債利回り上昇を背景に、ポンドに「追加の上乗せ分(リスク・プレミアム=不確実性の補償として投資家が要求する追加リターン)」が付いている可能性を示す。
想定シナリオとして、5月選挙で労働党の結果が弱い場合、夏に党首への異議申し立て(指導部交代を求める動き)が起き得るとしている。その場合、英国の債券市場(固定利付商品=国債など、利息が基本的に固定される金融商品)ではリスク・プレミアムが残りやすく、変化の有無は挑戦者の政策方針や実際の対応次第となる。
ポンドのリスク・プレミアムと政治不透明感
フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)の報道として、議会労働党の一部が福祉支出の見直し(社会保障給付の改革)に向けて動いているとされる。これは、他分野での支出拡大案に対する「財源・歳出の歯止め」として機能する可能性がある、という位置付けだ。
基本シナリオは政策金利(Bank Rate=BoEの基準金利)の据え置きだが、上振れリスクがあるとしている。利上げの可能性が高いとし、時期は次回のBoE判断次第で2026年Q2末(4〜6月末)〜Q3初(7〜9月初)になり得るとしている。
BoEとECBの政策金利見通し(市場が織り込む将来の金利)から算出した理論水準と、現物のEUR/GBPを比べる指標では、リスク・プレミアムは約2%とされる。昨年の予算発表(Budget=英国政府の財政方針の主要発表)前よりは小さいが、依然として無視できない水準だとしている。
ポンドはユーロに対して測定可能なリスク・プレミアムを伴って取引されており、その結果としてEUR/GBPが高止まりしている。2025年を振り返ると、5月の地方選をめぐる政治不透明感と、その後の(結果的に失敗した)夏の労働党党首交代騒動が背景にあった。こうした政治の摩擦と、エネルギー危機後の英国国債市場への悪影響が重なり、通貨にも影響が残ったという。
BoEの市場織り込みとのズレ
政治状況はなお重要で、政府内の亀裂が投資家心理を押し下げているとする。このため、2025年半ばに約2%と測ったリスク・プレミアムは、現在も約1.5%程度までしか縮小していないという。このプレミアムは、不透明な状況下でポンド建て資産を保有するために投資家が求める「追加の補償」を意味する。
焦点はBoEに移っており、市場は夏の利上げ確率を低く見積もっている(アンダープライス=織り込み不足)という。英国のインフレ率が粘着的(下がりにくい)で、2026年1〜3月期を通じて2.8%にとどまったことで、利上げ条件が想定より早く整いつつあるとしている。これにより、市場の織り込みと、BoEの進路に関する見方との乖離(ダイバージェンス=見通しのズレ)が生じているという。
この状況を踏まえ、今後数週間はポンド高方向のポジション(相場上昇を見込む持ち高)に価値があるとする。政治要因への過度な注目が、金融政策面での機会を生んでいるという見立てだ。6月と7月の中銀会合に向け、EUR/GBPのオプション(将来、一定条件で売買できる権利)に織り込まれる予想変動率(インプライド・ボラティリティ=市場が見込む値動きの大きさ)は上昇しやすいとしている。
デリバティブ(金融派生商品)取引を行う投資家は、EUR/GBPの下落で利益が出るオプション、例えばGBPコール(ポンドを買う権利)を検討すべきだとする。この戦略は、BoE利上げによるポンド高の上振れを取り込みつつ、政治不安が再燃した場合の損失を限定できる(損失を一定範囲に抑える)としている。現状の価格水準は、市場が英国金利上昇の可能性を本格的に織り込む前のエントリー機会になり得る、という主張だ。