カナダの春季経済アップデートでは、2026〜27年度(FY26-27)の財政赤字見通しは「2025年度予算(Budget 2025)」とほぼ同水準に据え置かれた。増収分を活用し、新規施策として375億カナダドル(CAD)の財源を確保する。
債務管理戦略(国債の発行計画と満期構成などを示す方針)では、カナダ政府債(Government of Canada bond、連邦政府が発行する国債)の発行額を2,980億カナダドルに維持する一方、財務省短期証券(Treasury bills、期間が短い国の短期債)の残高を減らす。発行計画は、2年債1,100億カナダドル、5年債800億カナダドル、10年債800億カナダドル、30年債240億カナダドル、グリーンボンド(環境目的の事業に資金を充てる債券)40億カナダドルで構成される。
市場反応と金利の動き
アップデート後の市場の動きは限定的で、短期ゾーン(金利カーブのうち短い年限の部分)の金利は最大でも約1bp(ベーシスポイント=0.01%)低下するにとどまった。金利面ではカナダは米国に比べて弱く推移し、地政学関連のニュースが引き続き意識された。
市場では、カナダ銀行(Bank of Canada、BoC:カナダの中央銀行)が2026年を通じて政策金利(中央銀行が金融政策として設定する短期金利)を据え置き、2027年初に中立金利(景気を過熱も冷やしもしない水準)へ向かうとの見方が維持されている。今回のアップデートは、国債発行計画や金融政策の前提を変える内容ではなかった。
BoCが2026年を通じて政策金利を据え置くと見込まれる中、金利カーブの短期ゾーンのボラティリティ(価格変動の大きさ)は低位にとどまりやすい。カナダ統計局の最新報告では、コアインフレ率(景気変動の影響を受けやすい項目を除いて物価の基調をみる指標)が3月に2.4%へ鈍化し、BoCが慎重に様子見を続ける根拠になっている。こうした環境では、金利が一定の範囲で動きやすい局面に有利な戦略、例えばCORRA先物(カナダの無担保翌日物レポ金利であるCORRAを参照する金利先物)に対するオプション(将来の一定条件で売買できる権利)を売ってプレミアム(オプションの受け取り代金)を得る手法が選好されやすい。
政府の春季経済アップデートは、2025年度予算で示された国債発行プログラムを追認し、市場にとっての不確定要素を1つ取り除いた。新規国債2,980億ドルの供給が見通せることは市場の安定に寄与し、カナダの債券(債券市場全般、特に国債などの高格付け債)に対する前向きな見方を下支えする。これは、中央銀行が利上げを続けていた時期に比べ、供給・政策の見通しが読みやすい点で対照的だ。
クロスマーケットの相対価値
カナダ国債は米国債に対して弱含みが続き、先週はカナダと米国の2年金利差(2年債利回りの差)が75bpまで拡大した。背景には、米国で賃金上昇が強く、米連邦準備制度理事会(Federal Reserve:米国の中央銀行)がよりタカ派(インフレ抑制のため金融引き締めに前向き)の姿勢を維持していることがある。このため、今後数週間でスプレッド(利回り差)が縮小する方向を狙う相対価値の取引機会が意識される。
国内要因が落ち着いて見える一方、経済アップデートへの反応が小さかったのは、地政学の見出しが市場の関心を集めているためだ。こうした外部要因は最大のリスクであり、突発的にボラティリティを高める可能性がある。そのため、国内政策が安定するとの見立てを基本としつつ、オプションを用いて予期しない世界的イベントに備えるヘッジ(損失を抑えるための保険的な取引)は有効な戦略となる。