チリ中央銀行は全会一致で、政策金利(市場の金利の土台になる基準の金利)を4.50%に据え置いた。理事会は、中東情勢の悪化が金融政策の見通しに重荷になっているとした。
チリ中央銀行は、戦争が世界経済に与える影響は、3月の金融政策報告書(IPoM:四半期ごとに公表する経済・物価見通し)で想定したシナリオより悪化していると指摘。さらなる緊張拡大は、物価(インフレ)を押し上げる一方、世界経済の減速も深める可能性があるとした。
中東情勢とインフレリスク
理事会は、紛争が長期化すれば原油価格が高止まりしやすいと警告した。エネルギーを輸入に頼り、海外からのコスト上昇(輸入物価の上昇)が国内に波及しやすい「小規模な開放経済(貿易や資本の出入りが大きい経済)」にとって、このリスクは重要だとした。
据え置きにより、当局は「様子見」の姿勢を続ける。国内統計でインフレが鈍化している一方、供給面の新たなリスク(供給制約で価格が上がりやすくなる要因)も再燃しており、両面を見極める。次回の四半期IPoMでは、3月以降の変化を踏まえ、海外前提(外部環境の想定)の更新が見込まれる。
チリペソと市場の変動
チリペソでは、この「様子見」が不透明感を生み、米ドル/チリペソ(USD/CLP)相場が980を上回る形で表れた。変動(ボラティリティ:価格の振れ幅)が大きい局面では、相場の振れから収益機会を狙える通貨オプション(将来、あらかじめ決めた条件で売買する権利)の方が、現物で方向を当てにいくより慎重な戦略になりやすい。過去データでは、2025年は世界情勢が落ち着いていた時期にペソがより強かった。
インフレ懸念はチリだけではない。米国の3月CPI(消費者物価指数:家計が買うモノ・サービスの価格動向)は前年比3.7%と市場予想を上回り、2025年後半からの鈍化傾向に一服感をもたらした。この環境では、米連邦準備制度理事会(FRB:米国の中央銀行)が近く利下げすることを前提にした取引、例えば米ドル売り(ドルを持たない方向の取引)には慎重になるべきだ。世界的な金利低下を見込む取引は、前提を再点検する必要がある。
世界景気の減速リスクも戦略に影響する。IMF(国際通貨基金)が2026年の成長率見通しを2.8%へ引き下げたことは、その懸念を裏付ける。株式では、S&P500など主要指数のプットオプション(将来、一定の条件で売る権利)でポートフォリオをヘッジ(値下がりに備える保険)することが有効な防衛策となり得る。エネルギー高と金融環境の引き締まり(資金調達がしにくくなる状況)の組み合わせは、企業利益に逆風になりやすい。