米ドル円(USD/JPY)は火曜日、日銀の決定後に一時159.00を割り込んだものの、地政学リスクが続く中で米ドル買いが強まり持ち直し、159.50近辺で推移した。上昇率は0.07%。
日銀は政策金利(中央銀行が景気や物価を調整するために設定する短期金利)を0.75%に据え置いた。採決は6対3で、3人が利上げを支持した。日銀は物価見通しを引き上げ、「実質金利」(名目金利から物価上昇率を差し引いた金利)は引き続き低いとしつつ、物価上振れリスク(予想よりインフレが強まる恐れ)に警戒を示した。
日銀決定と初動の円相場
円は発表直後、当局が急な為替変動時の対応を示唆していることが支えとなり、いったん買われた。ただし、エネルギー供給への懸念が上値を抑えた。特に、輸入依存度が高い日本経済にとって重要なホルムズ海峡をめぐるリスクが意識された。
米ドルは、「安全資産需要」(不確実性が高い局面で相対的に買われやすい資産への資金流入)に支えられた。背景には米国とイランの緊張や外交停滞がある。米消費者心理も底堅く、コンファレンス・ボードの消費者信頼感指数は4月に92.8となった。
市場はFRBが政策金利を3.5%~3.75%で維持すると見込み、米国債利回り(債券の利回り=投資家が得る収益率)を支える材料となっている。あわせて、市場では「円売り持ち高の積み増し」(投機筋などによる円安方向のポジション再構築)、日本のスタグフレーション(景気停滞と物価上昇が同時に進む状態)リスク、流動性が低下しやすいゴールデンウィーク中の追加介入リスクも論点となった。
金利差と変動性(ボラティリティ)
注目点は日米金利差(米国と日本の金利の開き)で、円を押し上げるほど十分に縮小していない。FRBは3.5%~3.75%を維持する姿勢が強く、コアPCE(個人消費支出物価指数から価格変動の大きい食品・エネルギーを除いた物価指標)も前年比2.9%と粘着的(下がりにくい)で、米金利を支えやすい。金利差が大きい状態では、円を持つより米ドルを持つ方が利回り面で有利になりやすい。
日本では、日銀が強い姿勢を示しても状況は不安定だ。全国コアCPI(消費者物価指数のうち生鮮食品を除いた指標)は2.7%だが、賃金の伸びよりもエネルギー輸入コストの影響が大きい面があり、景気の強さを伴わない物価上昇=スタグフレーションの懸念が残る。
当局の為替介入(政府・日銀が市場で通貨を売買し、急な円安・円高を抑える行動)には警戒が必要だ。特に160.00の心理的節目に接近する局面では注意が高まる。2022年後半の急激な介入局面では、短時間で大きく動きやすく、数分で300~500pips(ピップス=為替の最小刻み。USD/JPYでは通常0.01円を1pipと数える)規模の下落が起きることもある。ゴールデンウィークは市場参加者が減り「流動性」(売買のしやすさ)が薄くなりやすく、値動きが跳ねやすいためリスクが増す。
不確実性が高い局面では、オプション(将来の売買を決めた条件で行う権利)を使った変動性重視の戦略が意識される。例えばロング・ストラドル(同じ条件のコールとプットを同時に買い、上下どちらかに大きく動けば利益を狙う戦略)が選択肢となる。USD/JPYの1カ月物オプションのインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の変動率)はすでに12%を上回り、相場の大きな上放れ、または急反転への警戒を映している。特定の方向を当てに行くより、上下いずれの大きな値動きでも収益機会が得られる構えが意識されやすい。