日銀は政策金利を0.75%に据え置いた。植田総裁は、6月会合で利上げがあるかどうかについて明確な手掛かりを示さなかった。
当初は反対票(金融政策決定で多数意見と異なる判断を示した委員)が3人出たことで、6月の利上げ観測が強まった。ただ、総裁は6月に「適切な判断」を行うと述べるにとどまり、市場の利上げ期待は後退した。
日銀のシグナルと6月観測
TDセキュリティーズは6月利上げをなお想定するが、確信度は低下したという。ホルムズ海峡が封鎖された場合(原油輸送の要所が止まり、エネルギー供給が不安定になること)、日本の需要が弱まりやすく、日銀はより長く様子見(政策変更を先送り)に傾く可能性があるとした。
同社は、円は上昇しにくい一方、日銀の姿勢は慎重なままだと指摘した。リスク事象(地政学・安全保障などで市場が動揺しやすい出来事)を背景にドル高が再燃し、たとえばイランへの攻撃再開といった展開になれば、ドル/円は2024年7月の高値である162円付近まで上昇し得ると警告した。
日本の大型連休(ゴールデンウィーク)は4月29日から5月6日まで。TDセキュリティーズは、この期間は市場の取引が細る(流動性が低下し、売買が成立しにくい)ため、財務省による為替介入(政府が円買い・ドル売りなどで相場に直接関与する行為)リスクが高まり得ると述べた。過去にも流動性が薄い局面で介入が行われた例があるためだ。
ゴールデンウィークの流動性低下と介入リスク
ホルムズ海峡の封鎖が続き日本経済を圧迫する恐れがあるなか、2024年7月に見られた162円水準の試し(上値を探る動き)が現実味を増している。週末には海峡近くで別の船舶が拿捕(だほ:武力などで押さえられること)されたとの報道もあり、緊張の再燃がこの見方を補強した。こうした状況は円の重しになりやすい。
今朝時点でドル/円が161.50円前後で推移するなか、市場は当局の動きに警戒を強めている。1カ月物のインプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算される将来の変動の大きさの見込み)が12%を超えて上昇しており、大きな値動きへの備えが進んでいることを示す。これはオプションの保険料(プレミアム)が上がり、急変動に備える需要が強いことを意味する。
ゴールデンウィークにかけて流動性は低下しやすく、財務省が介入を行う余地が広がる。こうした環境では、ボラティリティの上昇を狙う戦略(大きな変動から利益を得る考え方)が有利になり得る。たとえばストラドル(同じ権利行使価格の買いのコールと買いのプットを同時に持つ)やストラングル(異なる権利行使価格の買いコールと買いプットを持つ)を買う手法は、円安が進む場合でも、介入で急反転する場合でも、大きく動けば収益機会になりやすい。
過去にも、閑散相場で当局が動き、短時間でドル/円が5円下落した事例があった。このため、円を直接売るポジション(円安方向に賭ける建玉)をオプションや先物で持ち続けるのは危険が大きい。突然の介入で利益が一気に失われる可能性がある。