ブレント原油は、ホルムズ海峡が事実上閉鎖された状態が続き、米国とイランの協議が行き詰まる中、3週間ぶりの高値となった。ブレントは1バレル=100ドルを上回って推移し、市場は「原油高によるインフレ(物価上昇)が長引く」リスクを織り込んでいる。
Axiosの報道によれば、イランはホルムズ海峡の再開に向けた新しい提案を米国に示したという。週初の価格上昇を抑える要因になった可能性がある。
供給ショックでブレント高が継続
目立った進展がない中、ブレントは日中に上昇し、前日比2.75%高の1バレル=108.23ドルで引けた。これは、4月上旬に「2週間の停戦」が発表されて以来の高い終値。
その後もブレントはさらに1.00%上昇し、1バレル=109.31ドルとなった。先物(将来の受け渡しを約束して売買する契約)の価格全体も上昇し、6か月先のブレント先物は1.79%高の1バレル=88.01ドル。
ブレントが1週間近く100ドルを上回ったことで、インフレ懸念が再び意識されている。
ホルムズ海峡の閉鎖が続きブレント原油が100ドルを明確に上回っていることは、強気(価格上昇を見込む)姿勢を示すサインだとみる。協議停滞により、この供給ショック(一時的な供給不足による価格押し上げ)は短期で終わらない可能性が高い。タンカーの航跡データでは、海峡を通過する船舶が先月比で90%減少しており、現物市場(実際の原油の需給)の逼迫を裏付けている。
高い値動き(ボラティリティ)とスプレッドの戦略
先物の価格は急なバックワーデーション(期近=近い受け渡し月の価格が、期先=先の受け渡し月より高い状態)になっている。期近の契約が、6か月先(足元で約88ドル)に対して大きな上乗せで取引されており、この構造は「短期の契約を持つ」か「長期の契約を売る」動きを促しやすい。同程度のバックワーデーションが続いたのは、2025年後半のOPEC+(主要産油国で構成されるOPECと協調する非OPEC産油国の枠組み)の減産後に起きた供給不安以来だ。
地政学リスクが高いことから、オプション(将来、あらかじめ決めた価格で売買できる権利)の市場では予想変動率(相場がどれだけ動くと見込まれているかを示す指標)が極めて高い。今週はCBOE原油ボラティリティ指数(OVX:原油オプションから算出される、価格変動見通しの指標)が50を超えた。オプションをそのまま買うのは費用(支払うプレミアム=オプション代)が高くなりやすいため、強気のコール・スプレッド(上昇に賭けるコールを買い、より高い行使価格のコールを売ってコストを抑える手法)で費用を抑えつつ上昇余地を狙う選択肢がある。一方、プット売り(下落時に大きな損失になり得る取引)は、外交面で明確な打開が見えるまで非常に危険だ。
原油高が続くことで、年初に落ち着いていた広い意味でのインフレ懸念が再燃している。5年物の期待インフレ率(ブレークイーブン・インフレ率:国債と物価連動国債の利回り差から推計される、市場のインフレ予想の目安)は2.8%まで上昇し、今年の高水準となった。この環境では、政策金利(中央銀行が物価や景気を調整するために動かす短期金利)が高止まりする可能性があり、中央銀行が利下げ(金融緩和)の開始や再開を先送りするリスクがある。
今回の危機はブレントへの影響が相対的に大きく、他の指標とのスプレッド(油種間の価格差)に機会が生まれている。ブレントのWTI(米国の代表的な原油指標)に対する上乗せは1バレル=10ドル超に広がり、1年以上ぶりの水準となった。WTIは中東混乱の影響を受けにくいとされるためだ。この差が今後数週間、広いまま維持される、あるいはさらに拡大する可能性を見込む取引が考えられる。