S&P500構成企業の4割超(時価総額約29兆ドル)が今週決算を発表する。G5(主要5カ国)中央銀行のイベントに加え、ホルムズ海峡を巡る報道も続く見通しだ。水曜は引け後にアルファベット、マイクロソフト、アマゾン、メタ・プラットフォームズが集中し、翌日にアップルが続く。
注目点は、1株当たり利益(EPS)といった表面的な決算数字ではなく、AI(人工知能)に関連する先行きの設備投資(キャペックス、工場・データセンター・サーバーなどに投じる資金)だ。2026年に向けてAI関連の設備投資は7,400億ドル超がすでに示唆されており、アマゾン、マイクロソフト、メタ、アルファベットの4社だけで6,000億ドル超が市場に織り込まれている。
半導体が「伝達経路」
AI関連の設備投資が株式市場に波及する主な経路として、半導体が位置づけられている。年初来で半導体株は42%上昇する一方、「マグニフィセント・セブン(米大型ハイテク7社)」は約2%高にとどまり、NVIDIA(エヌビディア)を除くと実質横ばいだ。
2026年のS&P500の成長率見通しのうち約4割が半導体によるものとされ、大手クラウド事業者(ハイパースケーラー:巨大データセンターでクラウドを提供する企業)の設備投資計画と結び付いている。利益見通しの上方修正は一部に集中しており、S&P構成企業の中央値では予想に大きな変化がない。
マイクロン・テクノロジーがEPS見通しの上方修正の総額の過半を占め、市場予想(コンセンサス:複数アナリスト予想の平均)は実質的に倍増と説明されている。エクソンモービルは改定の約14%を占める。
市場はストレステスト(耐性試験)に直面しており、AI投資が単一の弱点になり得る。今週はアルファベット、マイクロソフト、アマゾン、メタの設備投資見通しが市場全体の分岐点になるとみる。短期投資家にとっては複雑な物語より、1つの変数に基づく大きな上げ下げに備えたポジション調整が中心となる。
設備投資見通しを巡るボラティリティ戦略
大きな価格変動(リプライシング:織り込み直し)が想定される局面では、ボラティリティ(価格変動)を買う戦略が最も単純だ。主要決算銘柄に加え、より重要なのはVanEck半導体ETF(上場投資信託)のSMHで、ストラドルやストラングル(いずれもオプション取引で、上昇・下落どちらに大きく動いても利益を狙う組み合わせ)を検討する手がある。市場はこれらの銘柄が静かな値動きに終わるとは見ていないためだ。
もっとも、リスクは下方向に偏っているように見える。SOX半導体指数は今年すでに35%超上昇しており、強い投資だけでなく、投資の加速継続まで織り込んでいる。半導体銘柄のプット(売る権利)やプット・スプレッド(プットの組み合わせで費用とリスクを抑える手法)は、支出抑制の兆しが出るだけでも取引が急激に巻き戻る可能性があり、リスク対リターンの観点で魅力的と考える。
この集中は2025年にも表れ、マイクロンの見通しだけでS&P全体の利益上方修正の過半を占めた。市場はもはや分散された投資先ではなく、限られたテクノロジー供給企業へのレバレッジ(借入やデリバティブを使って価格変動の影響を大きくする)をかけた賭けに近い。このため、主要プレーヤー1〜2社の失望で指数全体が脆くなる。
その脆さを踏まえると、市場全体のヘッジ(損失を抑える保険)は妥当だ。AI設備投資の勢いが鈍れば、テクノロジーだけでなく指数全体が再評価される。SPYやQQQのアウト・オブ・ザ・マネーのプット(現在の株価から離れた行使価格の売る権利)を買うことは、弱い見通しが引き金となるシステム的ショック(市場全体に波及する打撃)への比較的低コストな保険になり得る。