日銀が4月会合で利上げに動くとの見方は急速に後退した。4月上旬には市場が約18bp(ベーシスポイント=金利の0.01%)の引き締めを織り込んでいたが、足元ではほぼゼロ近辺まで低下している。
3月の日本の物価指標は、全国CPI(消費者物価指数)の総合・コア(生鮮食品を除く)ともに市場予想を上回った。ただ、金融政策はなお緩和的で、政策金利は実質(名目金利から物価上昇率を差し引いたもの)で大きくマイナスのままだ。
日銀見通しと4月決定
日銀は政策決定と同時に、経済・物価見通しを更新する見通しだ。前回の見通しではFY26(2026年度)の全国コアCPIが1.9%、FY27(2027年度)が2.0%で、新たな見通しは2.0%の目標を上回る可能性がある。
慎重な日銀と、より利上げに前向きなFRB(米連邦準備制度理事会)との姿勢の差が広がれば、USD/JPY(米ドル/円)が160を上回る可能性がある。160突破は、為替介入リスク(当局が円買い/ドル売りなどで相場を動かす可能性)の上昇と結び付けて意識されやすい。
日本の当局者は最近も介入の可能性に言及する発言を繰り返している。過去には1月にUSD/JPY水準の“レートチェック”(当局が市場参加者に水準を確認する行為で、介入の予告のように受け止められることがある)が観測され、160超ではドル買い意欲が弱まったとの見方もある。
市場との対話(市場向け発信)では、6月の利上げ観測が示唆されている。あるシナリオでは、6月に25bp(0.25%)引き上げて1.00%とする想定が置かれている。
円安圧力と介入リスク
FRBの政策金利が4.75%に据え置かれる一方、日銀はゼロ近辺にとどまり、日米の金利差(短期金利の差)が円安圧力として続いている。USD/JPYは164.50近辺で推移しており、当局の行動に市場が神経質になりやすい水準だ。この政策の食い違いが、円安の主因となっている。
日銀は難しい局面にある。日本の全国コアインフレ(基調的な物価上昇の目安)には強さが見られ、植田総裁は将来の利上げを示唆しつつ、市場の混乱を避ける必要がある。この不確実性から、USD/JPYのオプションのボラティリティ(価格変動の大きさを織り込んだ指標)は高止まりしやすい。方向に関係なく大きな値動きで収益機会を狙う戦略(例えば、上昇・下落のどちらでも利益が出やすい組み合わせ)を検討する余地がある。
2024年後半と2025年半ばに、相場が158や160を超えた局面で複数回の介入が行われた点も念頭に置くべきだ。財務省は投機的な動きを抑えるために行動する姿勢を示しており、USD/JPYのロング(ドル買い/円売り)を保有する場合は慎重さが求められる。急落への備えとして、アウト・オブ・ザ・マネー(権利行使価格が現行相場から離れ、現時点では行使しても得にならない)円コール・オプション(円を買う権利=ドル円の下落に備える手段)の購入によるヘッジ(損失の抑制策)も選択肢となる。
低金利の円を借りて高金利のドルで運用し金利差を得る「キャリートレード」は依然として活発で、相場を押し上げる力になっている。ただ、米国の経済指標が予想外に弱ければ、この取引が巻き戻され(解消の売買が一斉に発生し)急変しやすい。USD/JPY下落に備えるオプションのプレミアム(保険料に相当する価格)が高いのは、市場の警戒感を反映している。