USD/JPY(ドル/円)は4月、複数の世界的リスクがあるにもかかわらず、約2円幅の狭いレンジで推移している。今週は米連邦準備制度理事会(FRB)と日銀(BoJ)の金融政策決定会合に加え、経済指標や地政学リスク(国際情勢の緊張)が控え、値動きが急に大きくなる可能性がある。
市場の織り込み(市場参加者が予想を価格に反映させること)は、リスクイベントが集中している一方で、USD/JPYのボラティリティ(価格変動の大きさ)が低水準であることを示している。こうした材料が、足元の水準からの「ブレイクアウト(レンジを上抜け・下抜けする動き)」を引き起こすかが焦点となる。
日銀の利上げリスクは過小評価
日銀会合については、利上げの可能性が市場で十分に織り込まれていない(過小評価)とされる。あわせて、日銀のインフレ見通し(物価上昇の予測)の上方修正(予測を引き上げること)の有無にも関心が集まっている。
日銀が予想外の利上げを見送り、米国の政策メッセージがドル高を後押しし、原油高が続く場合、USD/JPYは上に抜ける可能性がある。注目水準として、160.50(年初来高値)や162(2024年高値)が挙げられている。
162方向への上昇は、取引されるボラティリティの上昇と、日本の為替介入(当局が市場で売買して相場の急変を抑えること)の思惑を強める可能性がある。
足元のUSD/JPYは静かな動きが続き、中心銀行会合を前に165.20近辺で狭いレンジを維持している。変動率は低下しており、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のJPY/USD CVOL指数は7.5%まで下がった。CVOL(市場が見込む将来の変動率の指標)は、オプション(将来、あらかじめ決めた条件で売買できる権利)価格を基に算出される。この低変動は「ばねが縮んだ状態」のようで、急なブレイクアウトが起きやすい環境といえる。
オプション価格はブレイクアウト狙いが割安
過去にも市場が日銀の動きを読み違えた局面があった。足元でも、日銀のサプライズ利上げリスクは同様に十分織り込まれていないように見える。先週の東京都区部コアCPI(消費者物価指数。生鮮食品を除いた物価の代表指標)が2.8%となり、日銀の目標である2%を25カ月連続で上回った。CPIは物価の上昇率を示し、金融政策判断の重要材料になる。
織り込み変動率(市場が想定する将来の値動きの大きさ)がここまで低いと、オプション購入のコスト(プレミアム)が相対的に低くなりやすい。日銀が動かない場合の上振れに備え、アウト・オブ・ザ・マネー(現時点では利益が出ない水準の)コール(買う権利)で、168方向の上昇に備える戦略が考えられる。政策の方向性の違い(米国は引き締め寄り、日本は緩和寄りという差)による急伸局面を、損失を限定して狙える。
一方で、下落リスクも小さくない。日銀のサプライズ利上げ、または為替介入が引き金になりうる。2024年4〜5月に160を超えた局面で、財務省が約9.8兆円規模で介入したとされる。プット(売る権利)の購入は、買い持ち(ロング)ポジションの保険(ヘッジ)にも、同様の下落局面を狙う手段にもなる。
この状況はFRBにも左右される。米国のサービス価格のインフレ(サービス分野の物価上昇)が粘着的なため、FRBはタカ派(利上げ・引き締めに前向き)の姿勢を維持すると見込まれる。ドルが円に対して強くなりやすい土台は崩れておらず、日銀がわずかでも市場の期待を下回れば、それが急速なドル高・円安のきっかけになり得る。