米ドルは軟調に推移している。市場では、湾岸地域での和平合意への期待に加え、米司法省(DoJ)が米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に関する調査を終了したとの報道が意識されている。この調査は、FRB本部ビルの改修をめぐるものだった。
ドル相場の見通しは、紛争の「結末」に左右されている。紛争が短期間で終結すれば、ドルは他の主要通貨に比べて上値が重くなりやすい。
Oil Disruption And Currency Divergence
原油の供給が長く滞れば、エネルギーを輸入に頼る国ほど打撃を受けやすい。反対に、エネルギーを輸出する国は相対的に有利になり得る。この場合、米国などの輸出国は、輸入国より景気面で持ちこたえる可能性がある。
また報告は、DoJの調査終了が「次期FRB議長にケビン・ウォーシュ氏が承認される可能性」と結び付けられている点にも触れている。さらに、米財務省とFRBの連携が進み、政策金利(中央銀行が景気や物価を左右するために決める金利)が低下する可能性があるとしている。
Market Impact And Trading Implications
長期化した紛争は、予想通り米ドルにとってプラスに働いた。2025年10〜12月期にはWTI原油(米国の代表的な原油指標)の価格が1バレル=95ドルを超え、日本やドイツなど主要なエネルギー輸入国の景気が弱含んだ。これを受け、米ドル指数(DXY:ドルが主要通貨に対してどれだけ強いかを示す指数)は100台前半から大きく上昇し、一時107まで上昇した後、現在の水準に落ち着いた。
パウエル議長に関する調査が終結した後、FRBトップ交代という「予想された変化」も起きた。ウォーシュ氏の承認により、市場では当初、利下げ期待が強まり、ドル安につながるとの見方が広がった。ただ、実際はより複雑だった。インフレが想定ほど鈍化せず、大幅な利下げは難しかった。
コアインフレ率(食料・エネルギーを除いた物価上昇率。物価の基調を示す)は前年同月比3.1%と、FRBの目標を上回っている。金利の先行きは読みづらく、利下げを求める政治的圧力と、物価安定を優先するFRBの使命(インフレを抑える責務)が対立している。この不透明感が、いまトレーダーが最も注目すべき材料だ。
このため、デリバティブ(先物やオプションなど、価格変動を利用する金融商品)戦略では、この対立が解けない点に焦点を当てる必要がある。次回FOMC(FRBの金融政策会合)が近づくほど、為替市場の変動(ボラティリティ)は高まりやすく、とくにユーロ/ドル(EUR/USD)とドル/円(USD/JPY)で動きが大きくなる可能性がある。相場の方向を当てずに大きな値動きから利益を狙うなら、ストラドルやストラングル(いずれもオプションを組み合わせ、上昇でも下落でも一定以上動けば利益を狙える手法)を買う戦略が選択肢となる。