EUR/CADは2日続伸後も1.6000を上回り、月曜の欧州時間は1.6010近辺で取引された。背景には、エネルギー価格の上昇がユーロを下支えしたことに加え、欧州中央銀行(ECB)が慎重な姿勢を続けるとの見方がある。
市場は木曜のECB理事会に注目している。政策担当者は、直近の経済指標(景気や物価などのデータ)と地政学リスク(国際情勢による不確実性)を見極めるため、政策金利(中央銀行が定める基準金利)を据え置くとの予想が大勢だ。
注目材料
ユーロの上昇は、資源価格と連動しやすいカナダドル(CAD)によって抑えられた。カナダは米国向け原油輸出が最大であり、原油高はCADを支えやすい。
米国産原油の代表指標であるWTI(ウエスト・テキサス中質油)は、執筆時点で1バレル=94.80ドル前後で推移していた。米・イラン間の和平協議が停滞し、供給不安が意識され、原油価格は上昇した。
ドナルド・トランプ米大統領は、イランとの直接協議につながり得たパキスタンへの代表団派遣を取りやめた。イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、「脅しや封鎖の下で押し付けられる交渉」には応じないと述べた。
また、イランの統制と米海軍による封鎖で、重要な海上輸送路の通航が大きく制限された状態が続き、混乱が長期化する懸念も原油価格を支えた。
レンジ局面を振り返る
2025年の同時期、EUR/CADは1.6000近辺で狭い値幅の推移が続いた。エネルギー高が資源国通貨のCADを押し上げる一方、欧州では物価上振れ懸念からECBが慎重姿勢を維持せざるを得ず、相場は膠着した。当時のWTIは米国とイランの対立を背景に、94.80ドル近辺で緊張感の強い水準にあった。
その後、2025年11月に緊張緩和の合意が成立し、封鎖が緩み供給が回復したことで状況は大きく変わった。WTIは現在、1バレル=78ドル前後で安定しており、CADを押し上げる力は以前より弱い。これにより、前年に通貨ペアをレンジに縛っていた力関係は崩れた。
エネルギーコストの低下はユーロ圏のインフレ圧力も和らげ、2026年3月のHICP(ユーロ圏の消費者物価指数、EUで比較しやすいよう基準をそろえた指標)は2.1%に低下した。2025年に目立った3.5%前後からの大幅な鈍化であり、ECBが景気を支える方向(金融緩和的な政策)を検討しやすくなる。市場では、第3四半期末までにECBが利下げ(政策金利の引き下げ)に動く確率を60%程度と織り込んでいる。
こうした環境は、デリバティブ(株価指数や金利、為替などを元にした金融派生商品)取引に新たな機会を生む。焦点はエネルギー主導の強弱ではなく、「ECBとカナダ中銀(BoC)がどちらが先に利下げするか」に移っている。ECBとBoCの金融政策の方向性がずれる局面で利益を狙えるオプション(将来、あらかじめ決めた価格で買う・売る権利)への関心が高まる。
利下げ時期の不確実性を背景に、EUR/CADオプションのインプライド・ボラティリティ(市場が見込む将来の変動率)は12カ月ぶり高水準の9.8%へ上昇した。ロング・ストラドル(同じ権利行使価格・同じ期限のコール=買う権利と、プット=売る権利を同時に買う戦略)は、有効な選択肢となり得る。いずれかの中銀が次の一手を示し、相場が大きく動けば、上げ下げどちらでも利益が出る可能性がある。
一方、カナダ統計局の最新データでは、2025年第4四半期のGDP(国内総生産、国全体の生産や所得の規模を示す指標)が前期比で0.2%減と予想外に縮小した。原油安の影響が想定以上にカナダ経済に響いている可能性があり、ECBよりBoCの方が先に利下げに踏み切る候補になりやすい。カナダドル安を見込むなら、第3四半期満期のEUR/CADコールオプションの購入を検討する余地がある。