中国人民元(CNY)の金利(利回り)カーブはこの1週間でスティープ化(短期より長期の利回りが相対的に上昇し、傾きが強まること)した。背景には、米国とイランの停戦による地政学リスクの後退に加え、年初のマクロ指標が堅調に始まったことがある。中国の2026年1~3月期(Q1)の実質GDP成長率は前年同期比4.8%と、政府目標をわずかに下回ったものの、外需(海外需要)と、工場生産の持ち直しに支えられた。
4月の製造業PMI(購買担当者景気指数:企業の購買担当者への調査から景気の強弱を示す指数。50超は景気拡大、50未満は縮小)は50.3が見込まれていたが、直近発表の公式製造業PMIは50.4と拡大域を維持している。あわせて、週次などの高頻度指標(速報性の高い短い周期の指標)も改善している。セメントクリンカー(セメントの中間材料)と電炉(電気炉)稼働率はそれぞれ2.4ポイント、1.0ポイント上昇し、大手製鉄所の操業率も上向いた。
原油高の影響は、現時点では主にエネルギー関連に限られている。石油アスファルト工場の操業率は低下し、PTA(高純度テレフタル酸:ポリエステル原料)稼働率は3月の89.4%から、4月の月中平均(足元)で75.7%へ低下した。
オンショア(中国本土市場)の債券需要は底堅い。北向きボンドコネクト(海外投資家が香港経由で本土債券を売買できる制度)の売買代金は3月に過去最高の1.22兆CNYとなり、日次平均も556億CNYまで増加した。
オフショア(域外)からの資金流入も続いた。EPFR(投資ファンドへの資金流出入を追跡するデータ)によると、4月第1週に中国債券ファンドは16億米ドルの資金流入となった。
成長モメンタム(景気の勢い)は「安定的だがまだら」とされ、政策は急がない姿勢が支えられている。中国人民銀行(PBoC)は、大幅な利下げは行わず、公開市場操作などの流動性供給(市場に資金を供給して金利を安定させること)を通じて金融緩和寄りの運営を続ける見通しだ。
人民元相場は、3カ月物オプションのインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の変動率)が3.8%と低水準にとどまりやすい。USD/CNYの短期ストラドル/ストラングル(同一満期でコールとプットを同時に売る/異なる行使価格のコールとプットを同時に売る戦略)を売ってプレミアム(オプション料)を得る手法は、選択肢になり得る。通貨が管理されやすい環境では、大きな変動が起きにくいという見方が背景にある。