TDセキュリティーズのストラテジストは、カナダ銀行(中央銀行)が翌日物政策金利(オーバーナイト・レート、金融機関同士の超短期取引に適用される基準金利)を4月会合でも2.25%に据え置き、その後も2026年を通じて維持する可能性が高いとみている。声明は、従来よりは均衡しつつも、引き続き慎重なトーンになると予想する。
4月の金融政策報告書(MPR、インフレや成長率の見通しを示す定例レポート)では、エネルギー価格の上昇を受けてインフレ見通しが上方修正される見通し。一方、コアインフレ(生鮮食品やエネルギーなど価格変動の大きい品目を除き、基調的な物価動向をみる指標)とGDP(国内総生産、国内の付加価値の合計)の見通し修正は小幅にとどまり、短期的な物価上振れは「一時的」として重視しない構えとされる。
成長リスクについては、原油高とホルムズ海峡の封鎖(中東の主要な石油輸送ルートが止まることによる供給懸念)に関連して「上振れ・下振れ両方向」と表現する可能性がある。加えて、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定、北米の貿易協定)の再交渉が続いていることに伴う不確実性にも、焦点を当てる見通しだ。
最近発表されたCPI(消費者物価指数、家計が購入するモノやサービスの価格変化)で下振れサプライズがあったことは、据え置きを後押しすると指摘する。市場の織り込み(市場価格が示す将来の金利見通し)では12月時点の金利が2.61%とされるが、戦争前の水準への回帰は緩やかになるとの見立て。
カナダ銀行は、市場が織り込む水準に反して、2026年末まで2.25%を維持する可能性が高いという。12月時点で2.61%という市場予想は行き過ぎで、カナダの政策の変化というより、米国市場の動きに引きずられている面が大きいとみる。つまり、将来の利上げ観測に対して逆方向のポジションを取る余地があるという示唆だ。
中央銀行が「待つ」余地は十分ある。先週公表された2026年3月のインフレ率は2.1%で、市場予想(コンセンサス、予想の平均)2.4%を下回った。ホルムズ海峡の封鎖によるエネルギー高は、総合インフレ(ヘッドライン、全品目ベースの物価)を一時的に押し上げるが、カナダ銀行はこの上振れを一過性として扱う見込み。利上げのハードル(実施に必要な条件)は高いままだという。
WTI原油(米国産原油の指標価格)が1バレル=95ドル近辺まで上昇したことは、リスクが両方向にある材料として、慎重姿勢を補強する。価格上昇はカナダのエネルギー産業に追い風となる一方、世界の消費者にとっては実質的な負担増(景気にとっての「税負担」と同様の効果)となり、他の輸出財への需要を鈍らせる可能性がある。このため、原油ショックだけを理由に利上げを急ぐ展開にはなりにくい。
不確実性はUSMCA再交渉にもある。ワシントンからの発言で進展が停滞し、企業の見通しを重くしているという。2025年後半に景気後退懸念が強く、市場が利下げを織り込んでいた局面とは状況が異なる。足元の安定は評価できるが、外部要因のリスクが残る以上、カナダ銀行は様子見を続ける可能性が高い。