フィリピン中央銀行(BSP)は4月23日、政策金利である「リバース・レポ金利(RRP=中央銀行が金融機関からお金を吸い上げる際に払う金利)」を4.50%に引き上げ、追加利上げの可能性も示した。UOBは、2026年6月と2026年7〜9月期に各0.25%(25bp=0.25%ポイント)ずつ引き上げ、政策金利が2026年末までに5.00%に達するとみる。
BSPは、今回の利上げは「インフレ予想(先行きの物価上昇見通し)」を安定させ、物価上昇が賃金やサービス価格などに波及する「二次的な値上がり(セカンドラウンド効果)」を抑える狙いがあると説明した。金融引き締め(利上げなどで資金の出回りを抑えること)は、データを見ながら段階的に進め、インフレ率を目標の3.0%に沿わせる方針も示した。
インフレ見通しと政策金利の道筋
BSPは、2026年と2027年の総合インフレ率(ヘッドライン=食品やエネルギーも含む全体の物価上昇率)が、目安としている4%の上限を上回ると予測している。2026年の見通しは6.3%(3月時点は5.1%、UOBは5.5%)、2027年は4.3%(同3.8%、UOBは3.5%)に引き上げた。
生鮮食品やエネルギーなど価格変動の大きい品目を除いた「コアインフレ(基調的な物価上昇率)」も、4%の上限に向けて上昇する見通しだ。インフレ見通しの背景として、中東情勢を巡る不透明感と、成長支援を目的とした財政出動(政府支出や補助金など)が続いていることが挙げられている。
BSPは新たな引き締め局面に入り、インフレ抑制に向けて政策金利を4.50%へ引き上げた。世界情勢によるコスト上昇と財政支援の継続で物価圧力が強まるなか、インフレ予想の安定を図る狙いがある。フィリピン統計庁の最新データでは、3月のインフレ率は6.1%へ加速し、7カ月ぶりの高水準となっており、中銀には引き続き対応が求められる。
金利・為替市場への影響
この転換は、金利スワップ市場(将来の金利を固定と変動で交換する取引)に機会を生む可能性がある。将来の金利見通しを反映するフォワードカーブ(満期ごとの将来金利の線)が、より高い金利水準を織り込み続ける見通しだからだ。6月に0.25%ポイントの追加利上げ、さらに7〜9月期にもう一段の利上げが見込まれるなら、ペソ金利スワップで「固定金利を支払う(ペイ・フィックス=金利上昇で有利になりやすい持ち方)」戦略が選択肢となる。この戦略は、政策金利が5.00%へ向かうという中銀の方向性から恩恵を受けやすい。
為替トレーダーにとっては、BSPの明確な対応がフィリピン・ペソの下支え要因になり得る。金利上昇で利回りが高まると、海外資金が入りやすくなり、対ドルでのペソ安を反転させる可能性がある。先週は1ドル=57.80ペソ近辺まで売られたが、その後57.25ペソ方向へ持ち直しており、さらにペソ高が進むなら、ドル/ペソの先物(フォワード=将来の為替レートをあらかじめ決める取引)を売る戦略が有利になり得る。
同様の動きは2022〜2023年にも見られた。当時BSPは、コロナ後のインフレに対応するため、合計で4.00%ポイント超の大幅利上げを実施し、ペソは遅れて下げ止まった。継続的な引き締めが通貨の安定につながり得ることを示した形だ。今回は「段階的なペース」を強調しており、当時より緩やかだが、基本の枠組みは近い可能性がある。