米ドル/円は火曜日、米ドルが底堅く推移し、投資家のリスク選好(リスクの高い資産を買う姿勢)が弱まったことで上昇した。相場は159.57円近辺で取引され、約0.47%高となった。
市場は、水曜日に2週間の停戦期限を迎える前の米国・イラン協議を巡る不透明感を注視した。週末にホルムズ海峡で緊張が再燃し、早期進展への期待が後退した。
地政学リスクの不透明感と市場の焦点
パキスタンの情報相は、停戦期限までにイランが協議参加を判断する必要があると述べた。一方、イラン側は参加を確認していない。ホワイトハウス関係者は、JD・バンス米副大統領が協議に向けてまだ出発していないとした。
トランプ氏は停戦延長の考えはないと述べ、合意がなければ戦闘が再開する可能性があると警告した。イラン国会議長のモハンマド・バゲル・ガリバフ氏は、テヘランは「戦場で新たなカードを見せる準備をしている」「脅しの下での交渉は受け入れない」と語った。
ホルムズ海峡で供給が滞るリスクが意識され、原油価格は高止まりし、物価上昇(インフレ)と景気鈍化への懸念が強まった。原油高は一般に円の重しとなりやすい。日本はエネルギーの多くを輸入に依存するためだ。
原油主導のインフレは金利見通しにも影響し、市場では米連邦準備制度理事会(FRB:米国の中央銀行)が近い将来に利下げする回数が減るとの見方が広がった。日銀は段階的な利上げを続けるとの見方が多い一方、4月会合で金利を据え置く可能性があるとの報道も出ている。
米経済指標はドルを支えた。3月の小売売上高は前月比(MoM:前の月からどれだけ増減したか)1.7%増となり、市場予想の1.4%増を上回った(2月は0.7%増)。ADP雇用統計(民間調査会社ADPが推計する民間雇用の増減)では、雇用者数の4週平均が3.9万人から5.48万人へ増加した。市場の関心は引き続き160.00円の節目に向かっている。
変動性(ボラティリティ)を使った戦略とリスク管理
急な値動きが起きやすい局面では、値動きの大きさに賭ける「ボラティリティを買う」戦略が有力になりやすい。具体的には、USD/JPYのストラドルやストラングル(オプション取引で、上昇・下落どちらでも大きく動けば利益になり得る組み合わせ)を使い、方向に関係なく大きな変動を狙う手段がある。
方向感がある場合は、満期が長めのコールオプション(将来、あらかじめ決めた価格で買える権利)で上値余地を狙いつつ、損失を限定する方法がある。なお、160円を超える局面では、日本の財務省が為替介入(政府・中央銀行が市場で通貨を売買し相場に影響を与える行動)に踏み切り、相場が急に反転する可能性もある。よって、プットオプション(将来、あらかじめ決めた価格で売れる権利)を買って、円安方向のポジションの損失を抑える備えも選択肢となる。
高いエネルギー価格が円の重しになりやすい状況は続いている。北海ブレント原油先物(英国北海産原油を基準にした先物取引)は日本の交易条件(輸出で得られる収入と輸入に必要な支払いの関係)を悪化させやすく、米国と日本の金融政策の方向性の違い(政策の分岐)を意識させ、ドル優位・円劣位の材料になりやすい。
また、米国の3月の消費者物価指数(CPI:家計が購入する品目の価格変動を示す指標)が前年同月比3.1%と強めの結果となり、9月より前のFRB利下げ期待は後退しつつある。一方、日銀の短観(全国企業短期経済観測調査:企業の景況感を示す調査)では大企業製造業の景況感が悪化し、日銀が積極的に引き締めに動きにくいとの見方が出ている。こうした環境では、当局の介入がない限り、米ドル/円は上方向に動きやすいとの見方が残る。