英国では、労働党の党首をめぐる不透明感や5月の選挙が、春にかけて英ポンド(sterling)の投資家心理の重荷になり得る。ラボバンクは、英ポンドが以前強かったのは、イングランド銀行(Bank of England, BoE)の金融政策見通し(利上げ・利下げの予想)が短期間で大きく見直されたためだが、その動きはその後一部戻ったと指摘する。
英ポンドは、中東での戦争開始以降のパフォーマンスで、主要10通貨(G10:米ドル、ユーロ、英ポンド、円など先進国の代表的通貨群)の中で3番目に良好だ。市場の織り込み(市場価格に反映された利上げ・利下げ予想)では、今後6カ月で「1回強」の利上げが見込まれている。
英国の市場金利の最近の変動は、他のG10市場と比べて、英国のインフレ期待(将来の物価上昇率に対する市場の見方)がどれだけ安定しているかに懸念があることを示す。インフレリスクは、中東でエネルギー供給が滞る可能性(供給混乱)とも結び付く。
ユーロ/ポンド(EUR/GBP)では、200日および100日の単純移動平均線(SMA:過去一定期間の終値の平均で、相場の基調をみる代表的な指標)が0.87近辺の目先の下値支持(サポート:下げ止まりやすい水準)とみられている。ラボバンクは、0.86を「押し目」(一時的な下落局面での買い場)水準、0.88を6カ月目標として示し、緩やかな上昇を見込んでいる。
英国では政治不安が再び強まり、この春の英ポンド市場にとって注意をそらす要因になるとみる。政府は重要な財政方針の発表を前に圧力を受けており、英ポンドの先行き不透明感が増している。この状況は、2025年の選挙前後にみられた市場の神経質な動きを想起させる。
先週発表された英国のインフレ指標では、消費者物価指数(CPI:一般的な物価の動きを示す指標)が2.8%と高止まり(下がりにくい状態)し、物価上昇圧力への懸念が強まった。これに対しユーロ圏ではインフレ率が2.2%に低下しており、欧州中央銀行(ECB)には金融緩和(利下げなど景気を下支えする政策)を進めやすい余地がある。こうした差の拡大は、EUR/GBPを押し上げる要因になり得る。
その結果、金利市場では、2026年末までのBoEの利下げは25ベーシスポイント(bp:金利の単位で0.01%)1回分しか織り込まれていない。この利下げ余地の小ささは、エネルギー価格の上昇にも左右される。代表的な原油指標であるブレント原油(北海産原油の価格指標)は、地政学的緊張の再燃で1バレル95ドルを上回る場面があった。この価格変動は、英国のインフレ期待が他のG10経済より揺れやすいことを浮き彫りにする。
デリバティブ(金融派生商品:先物、オプションなど価格が別の資産に連動する取引)を扱う投資家にとっては、EUR/GBPが0.8600近辺に戻る局面では押し目買いを検討しやすい。今後数カ月で、同通貨ペアは0.8750〜0.8800方向へじり高(大きな上昇ではないが徐々に上がる動き)となる可能性がある。オプション(将来の売買価格を決める権利)では、コール・スプレッド(高い価格での買い権利を売り、低い価格での買い権利を買う組み合わせで、コストを抑えつつ上昇を狙う手法)の購入が、この緩やかな上昇に備える方法になり得る。