中国の2026年1〜3月期(第1四半期)の実質GDP成長率は前年同期比5.0%と、2025年10〜12月期(第4四半期)の4.5%から加速した。堅調な海外需要と安定した工業生産が成長を支えた一方、個人消費・投資・信用(融資)の国内需要は弱いままだった。
輸出は第1四半期に前年同期比14.7%増となった。中東情勢に伴う混乱の影響で3月は伸びが鈍化したものの、全体としては高い伸びを維持した。工業生産は第1四半期に同6.1%増。過剰生産能力(供給が需要を上回る状態)を抑える政策が続く中でも、輸出向け需要が生産を下支えした。
External Demand Leading Growth
物価指標は改善した。PPI(生産者物価指数:企業が出荷する段階の価格変動を示す指標)は、41カ月連続のマイナス(前年同月比で下落)を経て、3月に同0.5%とプラスに転じた。背景には、ホルムズ海峡周辺の供給混乱(物流の目詰まりや供給制約)に伴う原材料価格の上昇と、生産能力の調整がある。
PPIとCPI(消費者物価指数:家庭が購入する財・サービスの物価変動を示す指標)の改善により、金融緩和を強める必要性は低下した。DBSは2026年の1年物LPR(ローンプライムレート:銀行の優良企業向け貸出金利の目安)について、引き下げ予想を従来の20bp(ベーシスポイント=0.01%)から10bpへと引き下げた。
第1四半期のGDP成長率が5.0%に達したことで、海外需要は強い一方、国内景気は弱いという構図が鮮明になった。市場参加者は、内需依存の企業より海外売上比率の高い企業を優先しやすい。中国市場全体を一括で強気に見るより、銘柄選別が重要となる。
第1四半期に輸出が14.7%増と底堅いことは、製造業の強さが続く可能性を示す。4月12日に中国税関総署が公表したデータでは、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー関連部品など、ハイテク輸出の伸びが目立った。輸出志向のテック・工業系ETF(上場投資信託)に対するコールオプション(将来、決められた価格で買う権利)の活用は、今後数週間の戦略として検討余地がある。
Domestic Weakness And Hedging
一方、不動産分野の低迷と信用の伸び悩みは、国内の負担が続いていることを示す。最新統計によると、主要70都市の新築住宅価格は3月も下落し、12カ月連続のマイナスとなった。国内リスクへの備えとして、不動産や銀行セクター指数に対するプットオプション(将来、決められた価格で売る権利)をヘッジ(損失を抑える手段)として使う考え方がある。
インフレ(物価上昇)が持ち直す中、中央銀行による大規模な金融緩和の可能性は大きく低下した。年間の利下げ予想が10bp程度まで縮小したことで、人民元の下支え要因になり得る。2025年の多くの期間に広がっていた通貨安観測とは異なる流れであり、人民元の下落を見込んだポジションは見直しが進む可能性がある。
PPIのプラス転換は、工業企業の利益にとって重要だ。原材料コスト上昇が背景にあるため、銅や鉄鉱石の先物(将来の売買価格をあらかじめ決める取引)など、コモディティ(商品)に強気の見方を支える材料となる。これは、2020年代初頭に見られた景気回復局面の初期と似た動きでもある。
中東の混乱など地政学リスクは、無視できない価格変動要因だ。今月、海上輸送の保険料はすでに5%上昇しており、緊張の高まりを映している。特にエネルギーや物流関連では、サプライチェーン(供給網)の急変に備え、オプションを用いたヘッジを検討したい。