INGは、年末にかけてUSD/CAD(米ドル/カナダドル)が小幅に下落するとみている。主因は、FRB(米連邦準備制度理事会)が第3四半期に利下げを再開すれば米ドル安が進みやすい、という想定だ。この見通しは、カナダドルの主な下支えがカナダ国内要因ではなく、米国の金融政策(政策金利の動き)にある、という前提に立つ。
カナダの見通しは支援材料が乏しいとされ、BOC(カナダ銀行、中央銀行)は、今後のUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定=北米の貿易協定)交渉と雇用への影響を重視しているという。INGは、市場が年末までに約30bp(ベーシスポイント=金利の単位で0.01%)の利上げを織り込んでいる一方で、BOCが利上げに動くとは予想していない。
INGは、原油が戦前(2022年以前)水準を上回って推移し、緊張緩和で世界のリスク心理(投資家がリスク資産を取りやすい度合い)が改善する、というシナリオも示す。その場合、USMCA関連のリスクが強まる前にUSD/CADが1.36へ戻る可能性があるとしている。
INGの昨年の見方では、FRBが利下げを開始すれば米ドルは下落するとしていたが、実際に2025年第3四半期にその動きが確認された。これによりUSD/CADは一時下落したものの、その後は上向きに推移している。足元では1.3750近辺で取引されており、状況は複雑化している。
主因は、明確なFRBの利下げ局面(金融緩和サイクル)から、国境(米加)両側での政策不透明感へと移ったことだ。米国では、3月CPI(消費者物価指数=物価の代表指標)が3.1%と高止まりし、FRBは利下げを一旦見送り、指標次第で判断する姿勢(データ依存)を強めた。一方カナダでは、最新の労働力調査で雇用増が1万5,000人にとどまり、BOCがFRBより先に利下げを迫られるのではないかとの観測が広がっている。
原油価格はカナダドル(通称ルーニー)の支えになっている。WTI(米国の代表的な原油指標)が1バレル88ドル近辺で底堅く、2022年以前の水準を大きく上回るため、本来ならUSD/CADを押し下げやすい。ただし、カナダ国内景気への懸念が強まり、その効果は相殺されている。
最大の懸念材料は、2026年7月に予定されるUSMCAの見直しだ。ワシントン発の政治的な発言が増え、カナダの輸出や投資に不確実性が生じている。これが、カナダドルの買い持ち(ロング)をためらう要因になっている。
デリバティブ(金融派生商品)取引では、こうした環境はUSD/CADのコールオプション(あらかじめ決めた価格で買う権利)を、行使価格(ストライク)1.3900近辺、満期2カ月程度で購入する戦略が考えられる。USMCAの悪材料やカナダの弱い経済指標で相場が急伸した場合の利益を狙える。想定に反して下落した場合の損失は、支払ったプレミアム(オプション料)に限定される。
材料が交錯するため、見直し時期に近づくほどインプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算される予想変動率)も上昇しやすい。別案として、ロング・ストラドル(同じ行使価格でコールとプット=売る権利を同時に買う)もある。どちらの方向でも大きく動けば利益になり、不確実性の高まり自体を収益機会にできる。