スイスの3月の生産者・輸入物価(企業が国内で生産した財と、海外から輸入した財の価格変動を示す指標)は、前年同月比でマイナス2.7%となり、低下幅は前月から変わらなかった。総合指数は前年を下回ったままで、前年割れが続いている。
生産者・輸入物価は、消費者物価よりも前の段階(企業の仕入れや生産コスト)にある価格の動きを捉えるため、供給網の上流での「物価の押し上げ圧力(インフレ圧力)」を早めに測る材料として使われる。
3月もマイナス2.7%で横ばいだったことは、物価の伸びが鈍い状態(ディスインフレ=インフレ率の低下)がスイス経済に定着していることを示す。スイス国立銀行(SNB)の金融政策は引き続き「ハト派(景気を優先し、利下げや緩和に前向き)」に傾きやすい状況だ。市場では、金利低下の恩恵を受けやすい取引が意識されやすい。
消費者物価の基調(コアインフレ=エネルギーなど変動の大きい項目を除いて物価の流れを見やすくした指標)がほぼプラスにとどまり、2026年3月は0.6%と低い。SNBが2025年後半に先回りして利下げした経緯を踏まえると、今回の持続的な物価の弱さは、6月会合での追加利下げの可能性を高める要因となる。
一方で、この政策の方向性の違いは、スイスフランを他通貨に対して売る(ショートする)発想を強めやすい。たとえば欧州では、ユーロ圏のインフレ率が2.3%と高めに残る中、欧州中央銀行(ECB)は金利を据え置く姿勢を続けている。こうした環境では、EUR/CHF(ユーロ/スイスフラン)の上昇を狙うポジションが意識されやすい。オプション(将来の売買をあらかじめ決めた条件で行う権利)を使えば、損失を一定に抑えやすい点もある。
スイス株式にとっては追い風だ。フラン安は、スイス株価指数(SMI)を構成する多国籍の輸出企業にとって、海外で得た利益を円滑に押し上げやすい。通貨安と低い借入コストが続く見通しが重なれば、SMI全体の下支え要因になりやすい。