米国のJ.D.バンス副大統領は、イランとの協議が継続しており、米国はイランと国際社会との経済的な結びつきも含めた、より広い合意を目指していると述べた。公開イベントで、交渉はパキスタンを含む複数のルート(複数の窓口)で進められていると説明した。
バンス氏は、協議は大きく前進しており、停戦は7日連続で維持されているとした。一方、双方の不信感が数十年にわたり積み重なっているため、合意は短期ではまとまらないとの見方を示した。
外交と経済統合
同氏は、米国はイランの核兵器保有を決して認めないと強調した。加えて、テヘラン(イラン政府)が「普通の国」のように振る舞うなら、経済面でも同様に扱われ、世界の貿易や金融の仕組みへのより深い参加(国際取引や資金のやり取りへの参加拡大)が可能になると述べた。
市場では、外交の余地が残るとの受け止めから、株式におおむね前向きな反応が見られた。これは、投資家がリスクを取りやすくなる局面(リスクオン:安全資産より株などを選びやすい状態)が広がったことと結び付けられた。
イランとの協議が続くことで、エネルギー市場の値動きの大きさ(ボラティリティ:価格が上下に振れやすい度合い)が抑えられ、当面は原油価格の上値が重くなっている。停戦が維持されているため、2025年後半の緊張局面で原油価格に上乗せされていた地政学リスク分(地政学リスク・プレミアム:紛争懸念で追加的に高くなる分)は消えた。なお、米CBOEボラティリティ指数(VIX:S&P500の予想変動を基にした「恐怖指数」)は14近辺で推移しており、市場が安心しすぎている可能性を示す。交渉が崩れれば状況は変わりうる。
仮に合意により、イラン産原油が1日100万バレル超、公式市場に戻る可能性がある。WTI原油(米国産原油の代表的な指標価格)には下押し圧力が明確となりやすい。WTIは現在1バレル=78ドル前後で取引されているため、価格下落に備える手段として、原油先物のプット・オプション(売る権利。価格下落で価値が上がる)を検討する余地がある。外交が進展すれば70ドル前半への下落が意識されうる。市場は合意成立の可能性を十分に織り込んでいない。
株式とボラティリティのヘッジ
外交進展がもたらすリスクオンの流れは株式を下支えし、S&P500は数年ぶりの高値圏を維持している。協議に関する良いニュースが続けば、一段高となる可能性があり、指数連動型ETF(株価指数に連動する上場投資信託)を対象にしたコール・オプション(買う権利。価格上昇で価値が上がる)に注目が集まりやすい。ただし、協議が決裂すれば急激な反転(急落)を招きうるため注意が必要だ。
合意が確実でない以上、悪い展開への備え(ヘッジ:損失を抑えるための対策)は妥当だ。副大統領が言及した「数十年の不信」は、交渉が失敗するリスクが小さくないことを示す。比較的安い水準で買える「離れた価格」のVIXコール(アウト・オブ・ザ・マネー:現時点では利益が出ない水準のオプション)は、停戦が崩れて軍事的緊張が再燃した場合に大きな上昇余地があり、ヘッジとして機能しやすい。