豪ドル(AUD)は火曜日の欧州時間、主要通貨の大半に対して下落し、相対的に上回ったのは米ドル(USD)のみだった。豪準備銀行(RBA)のアンドリュー・ハウザー副総裁が、中東情勢に伴うエネルギー供給の混乱や高インフレにより、今後数カ月は厳しい局面になり得ると述べたことが売り圧力につながった。
ハウザー氏は、高いインフレ(物価上昇)と供給制約(モノが十分に行き渡らない状態)の中で、経済が「エネルギー危機の衝撃を吸収できていない」と指摘し、「スタグフレーション(景気が弱いのに物価だけが上がる状態)的な局面」のリスクが高まっていると述べた。これは中銀にとって「悪夢」だとも語った。
Rba Warning Fuels Stagflation Fears
エネルギー価格の急変が、豪州企業の四半期利益に影響する可能性が意識された。ウエストパックは、エネルギー市場の混乱がインフレを押し上げ、金利(借入コスト)の上昇につながり得る一方、景気減速により一部顧客の環境が厳しくなる恐れがあるとした。
市場心理は、米国とイランの恒久的な停戦に向けた交渉が続くとの見方から改善した。S&P500先物は0.2%高の6,900近辺。米ドル指数(DXY=主要通貨に対するドルの総合的な強さを示す指標)は0.2%安の98.00近辺だった。
ロイターによると、米国とイランの交渉団が今週イスラマバードに戻る可能性がある。初回協議は進展が乏しく、米国はイランの核開発計画とホルムズ海峡の再開(海上輸送の要所で、封鎖懸念が原油価格に直結しやすい)を巡る要求を維持した。
Derivative Strategy Implications For Aud
スタグフレーションのリスクはデータでも裏付けられる。豪州の2026年1-3月期CPI(消費者物価指数=家計が購入するモノやサービスの価格動向を示す指標)は前年比4.1%と高止まりした一方、2025年10-12月期GDP(国内総生産=国内で生み出された付加価値の合計)は成長率が0.3%に鈍化していた。物価上昇と成長停滞の組み合わせは、RBAが警戒する「悪夢」の構図に当たる。
主因はエネルギーショックで、WTI原油先物(米国産原油の代表的な先物=将来の受け渡し価格をいま決める取引)が足元で1バレル=115ドルを上回った。企業収益と個人消費を圧迫し、豪州景気に弱気材料となりやすい。中期的に続く逆風とみられる。
不透明感を背景に、AUD/USDのオプション(将来の為替をあらかじめ決めた条件で売買できる権利)で示唆ボラティリティ(市場が見込む将来の変動の大きさ)が上昇し、「Aussie VIX」(豪ドル関連の予想変動を示す指標)が9.5へ上向き、2025年初の市場混乱以来の高水準となった。これにより、プットオプション(売る権利。下落局面で利益になりやすい)を買う戦略は、最大損失を限定しながら豪ドル安に備える手段として検討余地がある。さらに、投機筋の豪ドルに対するネットショート(売り越し。売りポジションが買いを上回る状態)が3週連続で積み上がっており、弱気見通しが広がっていることを示す。
米・イラン停戦交渉は「リスクオン」(投資家がリスク資産を選好しやすい地合い)をやや促し、本来は豪ドルの支援材料になりやすい。ただ、足元の豪ドル安は、国内要因がこの追い風を上回っていることを示す。地政学改善で豪ドルが一時的に反発する局面は、弱気ポジションを組む好機になり得る。