OCBCのストラテジスト、シム・モー・シオン氏とクリストファー・ウォン氏は、シンガポール金融管理局(MAS:シンガポールの中央銀行にあたる当局)が2026年4月14日に金融政策を引き締めるとみている。具体的には、S$NEER(シンガポールドル名目実効為替レート:貿易相手国全体に対する通貨の強さを示す指数)を管理する「政策バンド」(許容する変動範囲)の傾き(上昇ペース。傾きを上げる=通貨高を早める運用)を引き上げ、輸入インフレ(海外からの物価上昇が国内物価を押し上げること)に対応すると予想する。
市場の見方はすでに引き締め寄りのため、注目はMASがどの政策手段(レバー)を使うか、そして声明文のトーン(市場に対する姿勢の強さ)に移る。よりタカ派(インフレ抑制を優先し、引き締めに前向き)なトーンなら、S$NEERがバンド上限付近に張り付きやすく、米ドル/シンガポールドル(USD/SGD)は短期的に小幅下落しやすい。これは、米ドル全体の動きが大きく偏らない前提である。
Mas Policy Levers And Market Tone
MASがより中立的(バランス重視)な言い回しにとどめた場合、USD/SGDの反応は小さくなりやすい。USD/SGDの上値の目安(レジスタンス:上昇が止まりやすい水準)は1.2780、1.2810、1.2840/50とする。
下値の目安(サポート:下落が止まりやすい水準)は1.2710で、ここを明確に下抜ければ次は1.2620が意識される。上値の目安には、フィボナッチ・リトレースメント(過去の値動き幅に対する戻りの比率。38.2%や50%はよく使われる目安)に加え、移動平均線(一定期間の平均値でトレンドをみる指標)の21日、100日、200日線が含まれる。
当社の基本シナリオは、MASが本日、S$NEER政策バンドの傾きを引き上げて金融政策を引き締めるというものだ。狙いは輸入インフレの抑制で、直近のデータでは1-3月期の輸入物価指数が2.5%上昇し、1年以上で最も高い伸びとなった。これによりUSD/SGDには下押し圧力がかかると見込む。
Usdsgd Trading Strategy And Key Levels
市場がすでに「引き締め」を強く織り込んでいるため、直後の値動きは政策声明のトーンに左右される。1週間物のUSD/SGDオプション(一定期間内に売買する権利)のインプライド・ボラティリティ(市場が見込む将来の変動率)はすでに8.2%まで上昇しており、期待の高さを示す。したがって、傾き引き上げだけでタカ派色が強くなければ、大きな値動きになりにくい。
MASが引き締めに加えてタカ派の声明を示した場合、USD/SGDは重要サポートの1.2710を試しやすい。ここを下抜ければ、さらに1.2620方向の下落を狙い、短期のUSD/SGDプット・オプション(下落で利益が出やすいオプション)の買いを検討する余地がある。これはMASがシンガポールドル高をより速いペースで容認する姿勢を示すシグナルになり得る。
一方、声明が中立的で想定線なら、反応は限定的か、USD/SGDが短期的に持ち直す可能性がある。この場合、レジスタンスゾーン(上値が重くなりやすい帯)の1.2780〜1.2810近辺の権利行使価格(ストライク)でコール・オプション(上昇で利益が出やすいオプション)を売る戦略が選択肢となる。価格が上がりにくいことに加え、イベント通過後にオプションの変動率が低下しやすい点が追い風になる。
今後数週間の大きな方針としては、USD/SGDが上昇した局面では戻り売りを基本とする。政策の方向性はインフレ抑制のためのシンガポールドル高であり、1.2840/50のレジスタンス付近への戻りは、弱気ポジションの構築や積み増しの好機とみる。