金(XAU/USD)は、4日ぶり安値となる4,633~4,632ドル近辺から反発し、欧州時間早朝にこの日の高値を更新した。米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、週末の協議が合意に至らず終了した後、地域の関係国は数日以内に米国とイランを交渉の場に戻すよう働きかけているという。
米国のJD・バンス副大統領は「最終提案」は提示されたが拒否されたと述べ、イラン国営メディアは過度な要求が合意を妨げたと報じた。ドナルド・トランプ米大統領は、米海軍がホルムズ海峡(中東の重要な海上輸送路)を封鎖すると発言。さらにレバノンでのイスラエルによる攻撃が続き、地域全体の緊張が高まるリスクが意識された。
地政学リスクと原油価格
こうした動きを受け、WTI原油(米国の代表的な原油指標)は1バレル98ドルまで持ち直した。米労働統計局(BLS)のデータによれば、3月の米インフレ指標であるCPI(消費者物価指数)は、前月比+0.9%、前年比+3.3%と、月次では約4年ぶりの大きな伸びとなった。
利下げ観測の後退で米国債利回り(国債の利回り=市場金利の代表指標)が上昇し、米ドルを下支えした。一般に、ドル高はドル建てで取引される金の上昇を抑えやすい。短期のテクニカル面では、100時間SMA(単純移動平均線:一定期間の平均価格)を下回る限り弱含みで、MACD(移動平均の差を用いた勢い指標)はマイナス圏、RSI(買われ過ぎ・売られ過ぎをみる指標)は44近辺にとどまる。
上値抵抗は100時間SMAの4,732.63ドル近辺。明確な上抜けが続けば下向きの圧力が和らぐ可能性がある。市場は、過去の安値や直近の下値の節目をサポート(下値支持)候補として注視している。
インフレと金利見通し
市場が1年前に見方を変えるきっかけとなったインフレ指標には、引き続き注意が必要だ。2025年3月の米CPIは前年比+3.3%だったが、最新の2026年3月でも+3.4%と高止まりしており、インフレが「粘着的(下がりにくい)」であることを示す。これによりFRB(米連邦準備制度理事会)が「高金利を長く続ける」との見方が強まりやすい。
高金利環境は、利息が付かない資産である金にとって重しとなる。2025年も米国債利回り上昇が逆風だったが、足元では10年国債利回りが4.6%を上回って推移しており、この構図はより強い。デリバティブ(金融派生商品)取引では、金の上値が抑えられやすいとの前提から、反発局面でのコール・スプレッド売り(上昇局面で利益を狙うコールを売り、別のコールを買って損失を限定する戦略)などが選択肢となる。
昨年の急激な値動きを踏まえ、金オプションのインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の変動率)も注視したい。地政学的な発言が再び強まれば、変動率が急上昇する可能性がある。その場合、利益機会になり得るため、現水準ではロング・デーテッド(満期が遠い)ストラドル(同じ権利行使価格でコールとプットを同時に買い、上下どちらの大きな変動でも利益を狙う)やストラングル(権利行使価格をずらしてコールとプットを買う、より低コストだが必要な変動幅は大きい)も検討余地がある。